和田毅であり続けることの宿命「疲れるときも、もちろん…」 スターが抱える心情

鷹フルの単独インタビューに応じた和田毅さん【写真:冨田成美】
鷹フルの単独インタビューに応じた和田毅さん【写真:冨田成美】

本人にしか分からない和田毅という“ブランド”…「多分ぶっ倒れます」

 鷹フルがお送りする和田毅さんの単独インタビュー。全10回の第8回、テーマは「和田毅であり続けること」についてです。福岡の地では「レジェンド」として認識され、どこにいても視線を浴びる存在であることをどう感じているのでしょうか。ありのままの本音に迫ります。

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 日米165勝を挙げた超一流選手としての“宿命”ともいえる。SNSがこれだけ浸透している時代なだけに、一時たりとも気は抜けない。「それはもう、そういう気持ちではいますね。外に出るときは今でもそうです。横断歩道を渡るときとかも、赤信号でバーッと行っちゃったら、見ている人は見ている。誰しもがやりがちですけど。家の中や部屋の中、1人でいる時まで気を張っていたら、多分ぶっ倒れますけど」。そう笑いつつ、本心を明かした。

「ゴルフの打ちっ放しに行ったとしても、『なんで練習してないんだ』って思われるかもしれない。『なんでシーズン中にゴルフなんてやっているのか』ってね。『もっと練習せえよ』とか。ノックアウトを食らった次の日にはご飯に行きづらいとか。そういうのは日常茶飯事でしたね」

 スターが抱える心情を理解することはできるが、その“生きづらさ”は本人にしか分からない。和田毅という“ブランド”――。「24時間と言えば大袈裟ですけど、常に外では見られているっていうのを忘れたことはないですね。お酒を飲みすぎて記憶がなくなっちゃった時以外は覚えています」。茶目っ気たっぷりに語ることができるのも、今や“日常”となったからだ。

 現役時代には発展途上国へのワクチン寄付活動を続けてきた。昨年末までの寄付は累計73万本以上に上る。「少しでもワクチンのことを皆さんに知っていただいて、贈られる本数や国が増えたのであれば、続けてきた甲斐があるなと思っています」。そういった姿勢こそが、グラウンドの外でも愛される理由となっている。

 それでも、立場にあぐらをかいたことはない。「ただ野球をやっていただけなので。プロ野球選手がなんぼのもんじゃい、というか。そんなに偉くもないですし。もっと頭がいい人や、もっと稼いでいる方も世の中にたくさんいるわけだし。ただちょっと野球が上手かっただけなので、そんなすごいと思ったこともないですね」。

“有名税”との言葉もあるが、特異な環境と常に向き合ってきた。「もう慣れちゃって。疲れるときも、もちろんありますよ。県外の方が楽だったりとか、海外だったら自分のことを誰も知らないので。まあそれもそれで。それだけのことを自分がやってきたんだと思うしかないですから」。そう割り切ることで“演じる”感覚もなくなった。

 グラウンドを離れれば、いつも柔和な表情を見せる43歳。その裏にある苦労を見せないのも、また和田毅だ。「僕は聖人とかじゃないですから」。にっこりと笑う姿もまた、ファンの心を離さないのだろう。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)