城島CBOが期待「将来的にはメジャーで」…20歳に示されたアーチストへの道
新たな“師匠”からのレッスンは限られた時間だった。それでも、数日間で得たものは、「城島2世」にとってかけがえのない財産となった。今キャンプが自身初のA組スタートとなった育成3年目の盛島稜大捕手。20歳が目を輝かせたのは、山川穂高内野手が惜しみなく教えてくれた技術論だった。
身長187センチ、体重104キロの堂々とした体格。現役時代は強打の捕手の代名詞だった城島健司チーフベースボールオフィサー(CBO)から「将来的にはメジャーでプレーできるくらい、スケールのでかいキャッチャーになってほしい」と期待をかけられる20歳。昨季は2軍で“公式戦デビュー”を果たしたが、3試合で7打数1安打4三振と結果を残せなかった。一方で3、4軍のファーム非公式戦で99試合に出場し打率.299、4本塁打、50打点と非凡な打撃センスも見せつけた。
順調な成長過程を示しているかに思えるが、盛島自身は悩みを抱えていた。「思ったよりもホームランが打てないんです」。そんな有望株に手を差し伸べたのが城島CBOだった。盛島と同じ沖縄出身で、現役屈指のアーチストである山川に20歳の指導を依頼した。これまで挨拶を交わした程度の2人だったが、この出会いが盛島に大きな変化をもたらした。
「打球にスピンを綺麗にかけることができれば、軽く打ってもホームランが入ると教えてもらって。『それができれば息の長い選手になれるぞ』って。もちろん難しいですし、簡単なことじゃないですけど。山川さんだからこそ説得力があるし、やってみようと思いました」
山川が実践してくれたのは、ボールを上から切るような感覚でスピンをかけるスイングだった。師匠のお手本を見た後に、見よう見まねでやってみると、打球の質はまるで違った。「僕の打球は“汚い”と思っていましたけど、そういうことだったんだなと気付かされました」
従来の盛島の打球はドライブ回転がかかり、ライナー性で吹き上がるような軌道を描いていた。それこそが、本塁打が増えない原因だったと自己分析する。「いい当たりでも弾道が低くて届かない打球が多かったんです」。そんな悩みをすぐに見抜き、長距離砲への“道しるべ”を示してくれたのが山川だった。
「(西武の)中村剛也さんや山川さんみたいな、綺麗な放物線を描く打球が打てるようになれば、思い切り振る必要もなくなってくる。とにかく教え方がめっちゃうまいっす。こちらの考えも『どんな感じなの』って聞いてくれますし、これまでで一番です」
まだまだ教わりたいこともあったが、第4クールが始まった15日からB組に合流することになった。小久保裕紀監督は当初から経験を積ませるためにA組スタートさせたことを説明。悔しさはもちろんあるが、下を向いてばかりはいられない。
「1日でも早く支配下になること。それが山川さんや城島さんへの一番の恩返しになるので。前を向いてやるしかないです」。長年、正捕手として君臨してきた甲斐拓也捕手がチームを去り、目の前に大きなチャンスが転がっている。美しい放物線を手に入れ、城島2世としての第1歩を踏み出す。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)