1月に球団統括本部付アドバイザーに就任…「でしゃばらないように」
鷹フルがお送りする和田毅さんの単独インタビュー。全10回の第5回、テーマは「将来のビジョン」についてです。昨季限りで22年間のプロ野球生活にピリオドを打ち、1月には「球団統括本部付アドバイザー」に就任した。「めざせ世界一」を掲げるチームにどう関わっていくのか——。思いを明かしてくれました。
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1月27日、球団統括本部付アドバイザーへの就任が発表された。春季キャンプ第1クールは宮崎を訪れ、温かい目線で若手投手らの動きを見守った。「投手コーチがいらっしゃるので、あまりでしゃばらないようにしました」と笑う。これまで培ってきた貴重な経験をどうホークスに還元していくのか。現時点でのビジョンを語った。
「フロントの仕事に興味はありますね。現時点では、という話ですけど」。近年は積極的に若手投手や育成選手とコミュニケーションをとり、時にはアドバイスも送っていた。コーチや監督といった現場の指導者、いわゆる“首脳陣”への転身を視野に入れているのかと思っていただけに、その答えは意外だった。
現場で選手と直に向き合うのが首脳陣であれば、外側からチーム作りに携わるのがフロントだ。「最初に自分が入団した時(2003年)よりは印象が変わりましたね。特に城島さんが戻ってこられた、ここ2、3年は変わりました」。昨年11月にチーフベースボールオフィサー(CBO)に就任した城島健司さんの存在が大きいという。
「ホークスは特に4軍もありますし、育成選手もたくさん取って、組織的に大きくなってはいるんですけど。どう動いてるのかとか、考え方とか、3、4軍のあり方とか。他のチームにはない組織なので。より興味は出てきますよね」。日本球界では類を見ない巨大組織となったホークス。永続的に常勝球団となるために必要なのは、「一本の幹」だ。
「結局、考え方を一本化できないと、チームって強くならないので。たとえば自分が監督やコーチになったとしても、その後にくる人が違うことをしていたら全く意味がない。だったらホークスとしては投手はこう、野手はこうといった形を作った上で、その方針にちゃんと乗っ取って伝えていけばいい。これが1つの“幹”なので。幹があれば選手は勝手に育っていくし、それを作ることが大事だと思いますね」
和田さんが強調したのはホークスが培ってきた“伝統”だ。「王(貞治)会長が作り上げた考え方やイズムを引き継がれていくのが、小久保(裕紀)さんや城島さん。去年でいえば、アップの時は着帽しましょうと、まずは服装から入っていましたけど。監督が代わったら、もう着帽なしでいいよじゃなくて、同じ方針でやっていく。そこは城島さんと話して『なるほどな』ってすごく思ったところですね」。語り口はいつも以上に熱を帯びていた。
「小久保さんがよく言われている『古き良きものを残しながら、新しいものを取り入れていく』。その形を作り上げようとしているのが今のホークスだと思うので。すごくそれに関しては興味が湧きますね」
現場でユニホームを着なくても、選手やチームは育てられる――。これまでの野球界にはなかなか生まれなかった新たな思考ともいえる。「将来的なところは、まだ自分にも分からないですけど」。そう言って柔らかな笑みを浮かべたが、ホークスを常に強いチームにしたいとの思いは揺るがない。和田さんが今後、どのような道を歩むのか。期待は募るばかりだ。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)