現在7年契約の3年目を迎えている近藤。契約が満了する2029年オフには36歳を迎える計算だ。ホークスへの移籍を決断した2022年オフは、世界最高峰の舞台に挑む“ラストチャンス”とも言えるタイミングだった。悩みぬいた日々の中で「メジャー」の文字は浮かばなかったのか。その問いかけに近藤は率直な思いを口にした。
「全然なかったですね」。そう即答しつつ、さらに言葉を続けた。「WBCがもう1年早かったら、分からなかったですけど……。『ちょっと話を聞きたいな』というのはあったかもしれないですね」。世界を相手にした戦いは、天才打者の心さえも震わせた。
ホークスと契約を終えた後の挑戦という可能性ももちろん残っているが、近藤は首を横に振った。「いやー、多分その気持ちにはならないですね。(米国の)環境に慣れるのもきついなと思いますし……」。その後に続けたのは意外な言葉だった。
「今のままでは無理だと思いますね、まだ。根本はそこが大きいと思います」
移籍1年目の2023年は本塁打、打点のタイトルを獲得。昨季も首位打者と最高出塁率に輝き、シーズンMVPも受賞した。現在の日本球界で“最強打者”との呼び声も高いが、本人はあくまで冷静だ。
「マサ(吉田正尚)とか、(鈴木)誠也とか見てもそうですし。日本人野手の超トップじゃないですか。マサのレベルで苦労するのかっていうのもありますし、誠也も頑張ってますけど『誠也であれか……』と思っちゃいますけどね。打つだけの選手なら山ほどいるんで、向こうに。ってなると、現実的に考えて厳しいですよね」
吉田も鈴木もメジャーで持ち味を発揮しながらも、絶対的な存在にはなれていないのが現状だ。ともに侍ジャパンで戦ったからこそ、2人の力は十分に分かっている。近藤でなければ口にできない思いだ。
目線は完全にホークスでの戦いに向いている。「プレッシャーはもちろんあります。でも、それは常につきまとうものだと思うので。結果に対して自分はどうこうできないので。しっかり自分の中でできるだけの準備はしていきたいなと思います」。
昨季はリーグ優勝を成し遂げながら、日本一には届かなかった。自身もシーズン終盤に右足首をねんざし、ポストシーズンを万全な状態で戦うことはできなかった。「もう一度143試合出ること。まずはそこですね」。天才打者の“夢”は、ホークスファンを笑顔にすることだ。