“想像以上”だった1年目は、自分に足りないものを明らかにしてくれた。廣瀬隆太内野手は1年目の昨季、プロ初本塁打を放つなど、1軍で35試合に出場した。一方で、7月に2軍落ちすると、8月は2軍で打率.213(61打数13安打)、OPS.613と低迷。「あれはめちゃめちゃしんどいっすね……」。1年目が終わり、苦笑いで振り返ったのは筑後の夏だった。
牧原大成、三森大貴両内野手の相次ぐ離脱で巡ってきたチャンスを掴んだ。昨年5月28日に1軍デビュー。初安打は17打席目と時間がかかったが、そこから6月は月間打率.319(69打数22安打)、2本塁打、8打点をマークした。
「プロに入る前までは自分が1軍で通用するのか、2軍でも通用するのかわからなかったので、不安もあったんですけど。1年間やってみて、1軍で通用した部分もあった。そこはすごく自信になりました。ここを基準にして、今年は上回る成績を残したいと思っています」
一方で、夏になると成績が急降下。牧原大の復帰とともに2軍落ちし、そのままシーズンを終えた。2軍ではデーゲームが主流で、大学時代とは違って試合は毎日行われる。勤続疲労が体に蓄積し、8月はファームでもノーアーチ。長打すらなかった。
「暑さと疲れでバットが振れなくなったというのもありました」。大学時代以上に日々の体のケアに気を遣うようになったが、それでも143試合を戦う体力を持っていないことを痛感した。「夏に2軍にいるのはきついなって感じでしたね」。本音も漏らす。
プロとして初めてのオフは母校・慶大のグラウンドでかつてのチームメートや後輩の力を借りて、自主トレに励んでいる。内容は二塁でのノックと打撃練習、トレーニングの繰り返し。基礎を固めることと、1年間戦う体力をつくることをテーマに掲げ、他の選手などに頼ることなく、1人で行なっている。
打撃では再現性を高めることを最優先にしている。「バッティングの中で大事にしようという軸の部分があやふやになっていた。その軸を持ってプレーできなかったのが反省でした」。打席ごとにバットの軌道やフォームが変わり、その結果、好不調の波をつくっていた。
「去年は意識ができていなかったし、意識しても続かなかった。意識すればできるのではないかなと思う」。打撃練習ではティーとマシンを使って、淡々と同じフォームで打つことを繰り返していた。
1年目とは違い、シーズンの流れもルーティンも、そして自らの立場も理解して臨む2年目。牧原大に勝たなければ、1軍に上がれないこともわかっている。「守備や打撃に関して自分のものをしっかり出せれば、ある程度やれるなというのはありました。まずは2軍で最低でも(打率)3割」。1軍で長いシーズンを戦うための準備に、余念はない。