選手として「レベルは上がらない」 廣瀬隆太の“エラー”…痛感した一発勝負の怖さ

ソフトバンク・廣瀬隆太【写真:竹村岳】
ソフトバンク・廣瀬隆太【写真:竹村岳】

4回のピンチで飛球が廣瀬のもとへ…先制点に繋がる“ミス”に指揮官もバッサリ

 図太さが持ち味のルーキーが、一発勝負の怖さを思い知った。意地のアーチだけでは、もう取り返せなかった。

 ソフトバンクの2軍は5日、ひなたサンマリンスタジアム宮崎で行われたファーム選手権でDeNAと対戦した。序盤からの劣勢を覆すことができず、2-6で敗戦。9回に唯一の得点となる2ランを放ったのが、廣瀬隆太内野手だった。優秀選手賞に選出されたものの、表情は晴れない。自らの「エラー」で、主導権を渡してしまったからだ。

 フォードに2打席連続で本塁打を浴びるなど、6点を追いかける展開で迎えた最終回。マウンドには、昨年までホークスに在籍していた森唯が上がっていた。1死からリチャード内野手が四球を選び、廣瀬が打席に向かった。直球系のボールを引っ張ると、打球は左翼席に着弾。「点差もあったので、ホームランを狙いに行こうと思っていました」と、感触は十分だった。

 1年目の今季は5月28日から1軍に昇格。35試合に出場して打率.233、2本塁打、9打点の成績を残した。ファームとはいえ、日本一を決める舞台。「ここまで頑張ってきてウエスタン・リーグで優勝したので、ここまで来たからには優勝(日本一)したいなと思っていました」と、頂点に立つために宮崎にやってきた。追いかける展開だったこともあり、ベンチの雰囲気も「あまり打てていなかったので、あまり明るくはなかったです」と代弁する。

 守備では、手痛いプレーを見せてしまった。4回2死一、二塁で益子が放った飛球は右翼方向へ。二塁手の廣瀬が背走しながら落下点にまで追いついたが、グラブに当てながらも落としてしまった。2人の走者が生還する。記録こそ安打だったものの、松山秀明2軍監督も「マエジュン(先発の前田純投手)のところはかわいそうでしたね。エラーですからね」とキッパリ言い切った。1試合で日本一が決まるファーム選手権だからこそ、先制点がとにかく重かった。

4回に落球した二塁・廣瀬隆太(右)【写真:竹村岳】
4回に落球した二塁・廣瀬隆太(右)【写真:竹村岳】

 廣瀬といえば、小久保裕紀監督にも「図太いな!」と言わせるほどの強心臓が持ち味だ。7月9日のオリックス戦(京セラドーム)では一、二塁間の打球を捕球したが、一塁へ悪送球。追加点を献上する痛いミスとなったが、その試合後についても「何も変わらず過ごしました。切り替えのスポーツなので」と、表情を変えずに語ったこともある。

 ファーム選手権という舞台で喫した痛恨の落球は「捕れたっすね」と、うつむきながら振り返る。結果的にではあるが、このプレーで失った2点が決勝点となり、責任も感じた。「プロ野球は一発勝負の世界。これから(1軍は)CSもありますけど、そういう場面で強くなっていかないと、1段階、選手としてレベルは上がらないと思います」。ミスをしたら反省して、できるように練習する。これまでも「切り替え」を含めて取り組んできたことだが、改めて1球の怖さを知ったファーム選手権となった。

「大学の時はそう(短期決戦)でしたけど。逆に、シーズンを通して短期決戦というのはなかったので、久しぶりの感覚でした」

 1軍は16日からクライマックス・シリーズのファイナルステージに向けて、調整を始めている。廣瀬は引き続き「みやざきフェニックス・リーグ」に出場していく予定で「まだどうなるかわからないですけど、CSが終わるまで少しでもチャンスがあるなら掴みに行きたいと思っています」。悔しさと怖さを痛感しながらも、ルーキーの表情はまた、たくましくなっていた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)