周東佑京のスーパーキャッチに名手・今宮健太が示した意外な反応…「怖いですね」

3日の日本ハム戦でダイビングキャッチしたソフトバンク・周東佑京【写真:荒川祐史】
3日の日本ハム戦でダイビングキャッチしたソフトバンク・周東佑京【写真:荒川祐史】

球場は大歓声も…何事もなかったかのようにベンチへ戻った周東

 今シーズン何度目の光景だっただろうか。中堅に入った周東佑京内野手がビッグプレーでピンチを救った。

 3日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)。3点ビハインドの4回2死一、二塁の場面でマルティネスの中前へ落ちそうな打球に猛チャージをかけると、躊躇なくダイビングキャッチ。グラウンドに落ちる直前でボールをつかみ取った。球場はあり得ない光景を見たかのような大歓声に包まれた。

 プレー直後の所作が周東らしさを表していた。勢いそのまま体を一回転させると、何事もなかったかのように立ち上がってベンチへ戻った。事実上、初めて中堅の定位置を掴んだ今シーズン。すでに名手の雰囲気を漂わせている28歳。その姿を近くで見ている今宮健太内野手から出た言葉がそれを物語っていた。

【華麗なる4秒】落下地点へ一直線「周東佑京にしか捕れない…!? 追加点許さぬ“スーパー韋駄天キャッチ”」【動画:パーソル パ・リーグTV】

「もうそれが普通(のプレー)すぎて怖いですね。あいつ自身が普通って言うのなら、そういうことなんでしょ」

 2013年から2017年まで5年連続でパ・リーグ遊撃手のゴールデングラブ賞に輝いた今宮。内外野の違いこそあれ、名手だからこそ感じた「異次元の当たり前さ」だった。「もちろん、いいプレーだったと思います。佑京の打ち出し(で打球位置を見極める)の判断。そこの良さと、一歩でも(その場で足を)踏んでしまえば間に合わなかったでしょうし」。簡潔にすごみを解説してくれた。

 周東の受け止めも実にクールなものだった。「普通に追っかけて普通に捕れたというか。まあ、スタートはうまく切れたなとは思いますけど、よく捕れたなくらいですかね」。気取るそぶりは全くない。「いつも言ってますけど、ああいうプレーができないと試合に出ている意味がないので。そこはよかったなと思います」と淡々と振り返った。

 一方で、素直に驚きを口にしたのは周東とともに外野を守った2人だった。昨年、外野部門で自身初のゴールデングラブ賞を受賞した近藤健介外野手は、左翼から美技を目の当たりにした。「絶対に(打球が)落ちたなと思ったので。やっぱりスタート、反応もいいですし、脚力も申し分ないので。佑京じゃないと取れなかったと思いますね」。プレー直後は笑顔で周東に拍手を送っていた。

「落ちたなと思ってカバーに回っていたら、どんどん視界の横から(周東が)出てきたので。えっ、もしかしたら捕れる? と思ったら、普通にキャッチしてたんで。すげーなって」。興奮気味に語ったのは、普段冷静な正木智也外野手だった。「勇気がいりますよね。打球判断と守備範囲がやっぱりものすごいなと思います」。同じ外野手として異次元のプレーを振り返った。

 ファインプレーが生まれた直前、3回の攻撃でチームは6点ビハインドの状況から3点を奪い、反撃ののろしを上げていた。結果的に敗れたが、大きなプレーであったことは間違いない。奈良原浩ヘッドコーチも「あれこそプロだなと。足だけじゃなくて守備でも金が取れる選手。いつでも集中してああいうプレーができるっていうのは頼りがいがありますよね」と賛辞を惜しまなかった。

「例え試合に負けたとしても、何か一つでもファンが『きてよかった』と思ってくれるようなプレーを見せたい」。小久保裕紀監督が日頃から口にする思いだ。プロも認める超一流のスーパープレー。周東が見せた姿はまさにそれだった。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)