「和田さんに救われた」 悩める木村光に“金言”…大先輩に届けた感謝の報告「マジで!?」

ソフトバンク・木村光【写真:竹村岳】
ソフトバンク・木村光【写真:竹村岳】

「和田さんがアドバイスしてくれたことが、めちゃめちゃ自分のためになりました」

 トンネルに光が差し込んだ。キッカケは大ベテランからの一言だった。2年目を迎えたソフトバンクの木村光投手は、16日に行われたウエスタン・リーグの阪神戦で2軍戦復帰を果たした。怪我に苦しんできた今季、リハビリ期間中も同期に負けじとパワーアップを計っていた右腕の支えとなったのは、大先輩・和田毅投手の助言だった。

 復帰戦のマウンドは1イニングを投げて無安打無失点。さらに、中1日で登板した18日の同戦でも1回1/3を投げて1安打無失点に抑え、2つの三振を奪った。「実際投げている感覚もいいんで、状態はいいんですけど、まだまだ詰めないといけないところはある。そこをしっかり詰めていきたいです」。実戦から約4か月も遠ざかっていただけに、表情には充実感が漂う。

 育成選手として入団した木村光は昨季、7月17日に支配下昇格を勝ち取りながら、その後、胸椎分離症でシーズン終了までリハビリ組で過ごした。今春キャンプはA組で迎えるも、開幕前に2軍に降格。1軍初登板を目指して奮闘する中で、今度は腓骨の疲労骨折を負い、再びリハビリ生活となった。

 普段はポジティブな右腕もさすがに堪えた。「結構(精神的に)来たのは来ましたけど、みんなの野球を見てて『野球やりたいな』とかは感じました。でも、復帰した時に(これまでと)同じだとアカンって思っていたんで、レベルアップして帰ろうというのを目標にしていました。もう、しゃあないなって。この2回の怪我をいい方向にもっていけているかなって今のところは思えています」。現実を受け止め、気持ちを切り替えることができた。

 レベルアップを遂げて復帰するため、試行錯誤していた時、「和田さんに救われた」と振り返る出来事があった。43歳でも現役を続ける左腕が筑後に練習に来た際、投球を見てもらう機会があった。投げる姿を見て、和田は体の開きが気になったという。木村光にもその自覚があり、森山良二リハビリ担当コーチと会話をしていた際に、和田に助言を求めた。

 大先輩が指摘したのは腕を上げる際に“肘”を意識することだった。「手じゃなくて、肘の方が自由に動く部分ではないから、ある程度の開きは直る」。実際に試してみると、和田からは「そうそう、そういう感じ」と太鼓判を押された。初めは慣れなかったものの、試行錯誤を繰り返し、弾むようにリズムをつけてみたら感覚がハマった。「そこからめっちゃ変わりました。球の質自体も結構良くなって、自分のイメージしてる感じにまとまってきた感じです」と手応えも掴んだ。

 2軍の復帰戦では自己最速となる151キロをマークした。「和田さんに報告したら、めっちゃ嬉しそうに『マジで?』みたいな感じで言って下さって、それは嬉しかったです」。実績も経験もまるで違う大先輩が、自分のことのように喜んでくれたことが嬉しく、励みになった。「自分は和田さんに救われました。和田さんが自分を見て下さってアドバイスしてくれたことが、めちゃめちゃ自分のためになりました」。木村光にとって大きすぎる一言だった。

 8月18日のロッテ戦(ZOZOマリン)で、同期入団で仲の良い松本晴投手がプロ初勝利を挙げた。自分と同じように前半戦の多くをリハビリに費やした左腕の白星を「心から嬉しい」と祝福する。と、同時に「自分は負けず嫌いなので負けたくはない。早く追いついて、成績出してやろうっていうのが今のモチベーションですかね。悔しいというより負けたくない。1番上の世界で横に並んで活躍したい。ライバルではあるけど、同じレベルでずっと高め合っていきたい」と刺激にも変える。プロ初勝利は先を越されたものの、いずれは最高の舞台でしのぎを削ってみせる。そのために前を向いて腕を振っていく。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)