同期の戦力外、大山が明かす本音
同期から突然、連絡が届いた。「クビになったわ」ーー。チームが2年連続の日本一に輝いた裏で、支配下と育成を合わせて19選手に来季の戦力構想外が通達された。そのうちの1人が3年目で最速156キロを誇る右腕、岩井俊介投手だった。ドラフト同期で同学年の大山凌投手がその事実を知ったのは、発表前夜だった。
同じ2023年ドラフト会議で岩井は2位指名、大山は6位指名でホークスに入団した。1年目から1軍で登板を重ねてきた2人。しかし、3年目となった今シーズンはともに出番が減少した。1軍で大山は4試合に登板し防御率10.80、岩井も防御率0.00ながらもわずか5試合にとどまっていた。
戦力構想外が発表される前日、10月25日の夜ーー。大山のもとに、LINEで1本の連絡が入った。岩井から届いたメッセージに、思わず電話をかける。「僕もだいぶソワソワしていたんですけど……」。自身も危機感を募らせていた中、突然の知らせに率直な思いを明かした。
会員になると続きをご覧いただけます
この先で分かる3つのこと
同期グループLINEで交わされたまさかのやりとり
岩井の戦力外通告に大山が抱いた「驚きではない感情」
痛恨被弾から痛感した1軍の壁と生き残るための決意
「最初、僕らの同期のLINEグループに来たんです。宮里(優吾)から『(球団から)電話が来ました』と連絡が入って、そこに(岩井)俊介が『今までありがとうございました』と送ってきたんです。最初、優吾に送っているのかなと思っていたんですけど、そういう雰囲気でもなかったので……。『マジで(連絡が)来たのかな』と思って、すぐに電話しました。『クビになったわ』と言われて……」
支配下7人、育成8人が指名された2023年のドラフトから、わずか3年。プロ野球選手は個人事業主とも言われ、結果を残せなければ契約を打ち切られる厳しい世界だ。岩井、宮里は同じ大卒でプロの世界に飛び込んだ2人。同期が受けた非情な通告に、大山もひと言ずつ、どこかもどかしさを感じさせる表情で口を開いた。
「もうそういう年だし。ホークスはそれぐらいレベルの高い球団なのもわかっているので。正直驚きはしないんですけど、食らうのは食らいましたね……。びっくりではないんですけど」
危機感と戦った2026年シーズン
大山自身にとっても、危機感と向き合い続けた2026年シーズンだった。「結果を出さないとクビも見えている。自分のやりたいことにそんなに時間をかけていられるのかな。今年はそういう葛藤がずっとありました。この1年はその思いが一番大きかったかもしれないです」。5月22日に今季初めて1軍に昇格したものの、わずか6日で登録抹消。直面する壁を打破していく方法はないか。7月からは先発に転向するなど、あらゆる手段を用いて打開策を探し続けた。
2軍では22試合に登板し、防御率1.71と好成績を残し、9月12日に再昇格。懸命な努力は、少しずつ実を結びつつあった。しかし、今季最後の1軍登板で味わった悔しさが忘れられない。
9月23日の西武戦(みずほPayPayドーム)、9点をリードした9回のマウンドへ上がると、2死までは簡単に打ち取ったものの、四球を与えた後に2ランを被弾。その後も二塁打を許すなど課題を残し、翌24日に再び2軍降格となった。ファームで取り組んできたことを、1軍の舞台で表現することができなかった。
「2アウト2ストライクまで行ったんですよ。でもやっぱりそんなに甘い世界じゃない。ごまかしきれない。2軍だと甘くても見逃してくれるかもしれないけど、高い水準で維持していかないといけないのは痛感しました」
2軍では自己最速157キロを計測した直球も、この試合では140キロ台中盤にとどまった。「あの(157キロを計測した)試合は出過ぎでしたけど、ここ最近は特に下半身が粘れなくなってきているので。登板間隔が空いても行ける準備はしていたんですけど、その難しさもありました」。シーズンが終わった今、タマスタ筑後で行われている秋季練習ではフォームの基盤を固めることを意識し、メニューに取り組んでいる。
親友との別れにも立ち止まっている時間はない。自分自身と向き合う日々は続く。「もうやるしかないっすね。球数とかは気にはしますけど、怪我の事を気にしてやらなくて、その前にクビになったら意味ないじゃないですか。攻めるしかないです」。もう1度晴れ舞台で結果を残すために。大山凌は全力で腕を振り続ける。
(森大樹 / Daiki Mori)