山本恵大が見た川村友斗の決勝弾「打ちそうだな」
大舞台で“親友”が放った値千金の一発を、自宅のテレビで眺めていた。日本シリーズの第2戦で決勝弾を放った川村友斗外野手は、驚いた表情でダイヤモンドを回っていた。その姿に山本恵大外野手が抱いたのは、ある「確信」だった。自分だからこそわかる、あのアーチの“真実”……。「たまたまじゃないでしょう」――。
10月25日に横浜スタジアムで行われた一戦は、延長10回に川村のバックスクリーンに飛び込むソロ本塁打が決勝点となった。レギュラーシーズンではノーアーチに終わっていた27歳の一発に、ベンチもお祭り騒ぎで背番号61を迎え入れていた。試合後の囲み取材。川村は3回にソロを放った同期入団かつ同学年の正木智也外野手に対して、「彼の活躍は刺激になっていましたか?」との質問を受けた。
「正木はプライベートでも仲がいいですし、あと山本(恵大)も同期なので。あの2人がスタメンで出て、僕が途中からという時はちょっと悔しさもあったんですけど。そこは自分(の力)が足りないから。やるべきことをしっかり取り組めたのかなと思います」
川村は正木から受けていた刺激を認めつつ、頂上決戦の場にいなかった山本恵の名前を自ら挙げた。8月に右肘を手術し、リハビリに励んでいる背番号77も「本当ですか? 嬉しいです」とにっこり笑う。自宅から眺めた盟友たちの活躍は、地道な日々に向き合うための最大の活力となった。
打率0割台に沈みながらも、限られた出番の中でバットを振り続けてきた男の姿を誰よりも見てきた。盟友だけが知る川村の苦悩と葛藤。テレビの前で妻とともに「打ちそうだな」と見守っていた予感は的中し、すぐさま山本恵からLINEを送った。
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この先で分かる3つのこと
「ガチでエグい」決勝弾直後に交わした盟友同士のLINE
「たまたまじゃない」山本恵大が見ていた川村友斗の猛練習
「2人より劣る」川村友斗がかつて漏らした悔しい本音とは
打率.095だった川村友斗…山本恵大が見ていた苦悩
「エグい」
ゲームセットは、午後9時39分だった。川村からの返信はすぐに届いた。
「ガチ、エグくね?」
「ハマスタでめっちゃ打つじゃん」
「奇跡すぎる」
そんなやり取りを交わした。川村にとって2024年シーズン以来、2年ぶりの本塁打。今季は守備固めや代走からの出場が多く、打率.095と結果を残せずにいた。その苦悩を知っている山本恵だからこそ、頂上決戦で見せたアーチの凄みがわかる。
「今年はすごく悩んでいたとは思うんですけど、ずっとアーリーワークにも出ていたじゃないですか。試合後にはトラジェクトアークを打って、準備していたからこそ打てた。僕はたまたまじゃないと思います。シーズン中も『(打率)0割台なのに、俺明るくない?』と振る舞っていましたね。『どっちのバットで行った方がいいと思う?』と聞かれたこともありましたし、結果を出すためだけにずっと頑張っていたと思います」
今シーズン、川村のスタメン起用は5試合のみだった。主な出番は試合の終盤で、対戦するのは力強いストレートを投じるリリーフ投手がほとんどだった。「やっぱり後ろから出てくるピッチャーって、すごいんですよ。難しい立ち位置で、あそこで打つのは大変だと思います」と山本恵。川村に対して、技術的な言葉を送ることはない。お互いの取り組みを、ただ静かに見守ってきた。
川村友斗が漏らしていた本音「2人よりも…」
「正木と川村」のアベックアーチは横浜で初めて実現したが、その5か月前に「正木と山本恵」も“競演”を果たしていた。
5月26日に行われた巨人戦(東京ドーム)、3回に正木と山本恵はともにソロアーチを放っていた。この時点で川村はまだシーズン無安打。「打ちたいとは思うんですけど、守備と走塁がダメになると本当に1軍にいる意味がなくなるので。打てない時こそ守備と走塁です」。そう自らに言い聞かせながら、2人の親友が見せたアベック弾に偽りのない本音を漏らしていた。
「同級生で取り上げられることもありますけど、2人はやっぱりスタメンで出ているので……。しかも活躍している試合も多いじゃないですか。僕もそこに並んで活躍したいんですけど、現時点で頭から出るには、2人よりも劣っているということだと思うので。いい刺激をもらいながらやっていきたいです」
正木はレギュラーシーズンで28本塁打を記録し、日本シリーズではMVPを獲得した。切磋琢磨を繰り返し、もう1度一緒にグラウンドに立ちたい――。リハビリ生活を送る山本恵はひたすらウエートトレーニングに励み、肉体改造に取り組んでいるところだ。「トレーニングを見てくれる人からも、『去年の正木は……』という話は絶対に出るので。来年に向けてしっかりと頑張りたいです」と足元を見つめていた。
10月末からはネットスローができるようになり、少しずつ復帰への道を歩んでいる。「2人の活躍は励みになりますし、特にリハビリに来てからはずっとテレビで見ていたので。僕もできることをしっかりやります」。優しく微笑んだ山本恵大。その表情には親友への思いと、固い決意が表れていた。
(竹村岳 / Gaku Takemura)