満塁の窮地脱する火消しに「すごいな、と思いましたね」
日本シリーズ進出の立役者と言っていいだろう。ホークスは14日から日本ハムと戦ったCSファイナルステージで、3連勝を飾って突破を決めた。1試合の重要度も、かかるプレッシャーも段違いの短期決戦。相手に行きかけた流れを食い止めたのが、鈴木豪太投手だった。
決戦は想定外の展開で幕を開けた。14日の初戦、みずほPayPayドームのマウンドに立ったのはエースのリバン・モイネロ投手。ただ、球は走らず、制球も安定しない。初回2死一、三塁はなんとか無失点で切り抜けたが、2回には同点に追いつかれた。3回には無死満塁の大ピンチを招き、柴田の犠飛で勝ち越された。
モイネロが3回途中で6安打4四死球3失点の大乱調。予想だにしない展開で2点のビハインドを背負い、本拠地の空気は凍りついた。短期決戦の初戦、しかもエースの誤算。ここで崩れていれば、シリーズの流れそのものを失っていた可能性もあった。
水野に押し出し四球を与えて3点目を失ったところで、首脳陣はモイネロ交代を決断。送り込まれたのがルーキーの鈴木豪だ。2死満塁で登板した右腕は臆することなく腕を振り、山縣を遊ゴロに打ち取ってピンチを脱した。さらに回を跨いだ4回も3者凡退。この直後、打線が打者一巡の猛攻で5点を奪って逆転し、鈴木豪には勝利投手の権利が転がり込んだ。
大事な初戦、そしてシリーズ全体の行方を左右しかねない場面。堂々たる投球で窮地を乗り切った右腕に、感嘆の言葉を漏らす人物がいた。
「すごいな、と思いましたね」
こうこぼしたのは、その投球をセンターの位置で見ていた周東佑京外野手だった。あまりにも落ち着き払った姿。背番号23はベンチに戻ると、率直な疑問を鈴木豪にぶつけてみた。プロ1年目の23歳から返ってきたのは、さらに驚きを誘うものだった。
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この先で分かる3つのこと
周東佑京が思わず聞いた質問、鈴木豪太が返した言葉
自らの牽制死を救った好投に、周東佑京が抱いた感謝
CS初出場の代走で、周東佑京が直面した極限の緊張感
ピンチを乗り越えてまだ興奮が残るイニング間、周東は鈴木豪に聞いた。
「緊張しなかったの?」
返ってきたのは、あまりにも淡々とした答えだったという。
初めてのCS出場の緊張を知るからこそ「すごい」
「普通に『シーズン中と変わらなかった』みたいに言っていたので。初めてのクライマックス・シリーズであれだけ堂々とできるのはすごいなと思いました」
シーズン中と変わらない――。プロで初めて臨んだポストシーズン、エースが降板した直後の満塁という状況下。プロ1年目の投手が口にする言葉としては、あまりにも堂々とし過ぎていた。
「なんかいろいろと話を聞きましたけど、すごいなと思いますよ。1年目とは思えないぐらいの心持ちを持っているから」
周東にとっても救われる鈴木豪の好投だった。3回の窮地を脱した直後の攻撃。1死から左前打で出塁したものの、2死一塁で山崎の牽制球に飛び出し、アウトになった。日本ハムに流れが行きかねない痛恨のミス。しかしイニングを跨ぎ4回のマウンドにも上がったルーキー右腕が、すぐに3つのアウトを奪い、流れを渡さなかった。「マジで僕的にも助かりましたし、ありがたいです」と、周東も感謝が尽きなかった。
周東がここまで舌を巻いたのには理由がある。自身が初めてCSという舞台に立った時の記憶が、鮮明に残っているからだ。
「ほぼ後ろから(途中出場)だったし、スタメンで行くことはなかったですけど、初めてのクライマックスシリーズはとにかく緊張がすごかったです」
周東のCS初出場は2019年10月5日、本拠地で行われたファーストステージの楽天戦。1点を追う8回2死、二塁打で出塁したジュリスベル・グラシアル内野手の代走として送り出された。与えられた役割は足。一打同点の場面で当然、ミスは許されない。試合の行方を左右する勝負どころで送り出される、極度の緊張を強いられるポジションだった。
「そういうキツさもあったし、その意味でもすごいなと思いますね」
短期決戦で勝負を左右する場面で、ベンチから飛び出していく重圧。その緊張と怖さを知っているからこそ、初めてのCSでいきなり最大級のピンチを託され、平然とそれをねじ伏せたルーキーの肝の据わり方が、際立って見えた。
初戦の3回。あの満塁を断ち切った投球がなければ――。周東も認める鈴木豪太の強心臓ぶり。頼れる先輩たちが並ぶブルペンに、また1人、大舞台で計算の立つ名前が加わった。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)