CS3戦目…エラーの直後に放った逆転2ラン
完璧に捉えた白球は、みるみる小さくなっていく。痛恨のミスを喫した直後、試合をひっくり返す一撃。クールな男は、自然と雄叫びをあげていた――。拳を握ったのは、ミスへの悔恨か、それとも後輩左腕への強い思いだったのか。正木智也外野手が、逆転2ランの真相を語った。
ホークスの3連勝で決着した「パーソルクライマックスシリーズ パ」のファイナルステージ。16日に行われた第3戦、試練に直面したのは5回だった。無死一塁の守備で、ゴロを処理した一塁手の正木は二塁に送球。これが悪送球となり無死二、三塁にピンチが広がった。先発の前田悠伍投手がそこから2死までこぎつけたが、水野の適時内野安打で勝ち越しを許した。
挽回のチャンスは直後に訪れた。1死二塁という状況で正木が打席へ。フルカウントから左腕・加藤の直球を振り抜くと、打球は左中間席に着弾した。意地の2ランで逆転し、前田悠も勝利投手に。チームとしても、日本シリーズ進出を決めてみせた。
「自分のミスから勝ち越しを許してしまい、この打席で『絶対に取り返す』。その気持ちだけでした」
試合中、球団広報を通じてコメントしていた背番号31。一体どんな胸中で、劇的な逆転2ランは生まれたのか。そして、正木が明かした“雄叫び”の真相とは――。
会員になると続きをご覧いただけます
この先で分かる3つのこと
鳥肌立った…正木の劇的弾にナインが漏らした一言とは
エラー直後…正木智也が前田悠伍に送った励ましの言葉
高校時代の苦い記憶も…正木智也が横浜に抱く想い
前田悠伍の姿が「めちゃくちゃ頼もしかった」
「雄叫びとガッツポーズは、自然と出ていましたね。一番興奮したホームランでした。大事な試合の、大事な場面で打てたので。自分のミスもありましたし、本当によかったです」
ベンチにいたチームメートも「かっけえ……鳥肌立ったわ」と感嘆の声をこぼした。この反応に、正木も「本当ですか? エラーしないに越したことはないですけど、いい場面で打てたことは嬉しかったっすね」と安堵した表情で振り返った。
ミスをした裏の攻撃で巡ってきた打席。失策については「すぐに切り替えられましたし、引きずらずにできました。そこのメンタルに関しては、上手くできたんじゃないかなと思います」とキッパリ言い切った。たとえ三振したとしても、ベンチに戻るまでに「“気持ちの整理”はつけます」という26歳。挫折と悔しさは何度も味わってきた。心に波を作ることなく放った一発には、間違いなく成長が現れていた。
「めちゃくちゃ集中していたので、正直あまり覚えていないんですけど、セカンドにいる庄子(雄大)を絶対にホームに返すという気持ちで、シンプルにいけたのかなと思います。エラーしたことについては考えていなかったですね」
あくまで自然体を貫いた。だからこそ、熱く握った拳には正木の“本心”が詰まっていたはず。「(5回は)あのピンチから悠伍が頑張って1点に抑えてくれたので。本当に助かりましたし、自分も頑張ろうと思いました。めちゃくちゃ頼もしかったですね」。エラーの後にはすぐさまマウンドに駆け寄り「ごめん」と声をかけた。
横浜スタジアムは「いい思い出も悪い思い出もある」
CSを突破すると、2日間の休日を挟みチームは再始動。24日からは、いよいよDeNAとの頂上決戦が始まる。レギュラーシーズンで28本塁打を放った正木も、静かに意気込みを口にする。
「去年と一昨年とは全然自分も変わった姿になっていると思うので、自信を持ちながら思い切ってやりたいなと思います。横浜スタジアムは交流戦でホームランを打ったり、高校最後の夏も終わった場所なので。いい思い出も悪い思い出もある。プロに入ってそういう場所でシリーズができるのは嬉しいですし、感慨深さもありますね」
慶応高時代の3年夏。準々決勝で桐光学園高に敗れて、青春は幕を閉じたが、4番を務めていた正木は本塁打を含む4安打の大活躍だった。何倍も成長を遂げた姿で、横浜に戻る。強力なリードオフマンとして、ホークスに勢いをつけていきたい。
「CSのホームランは自分の成長も感じられましたし、ああいう場面でもっと打てる選手になりたいなと改めて思いました。上位打線につながっていくところでチャンスを作れるかが重要になると思うので、そこを意識して戦っていきたいです」。ミスを喫した後でも、下を向くことなく放ってみせた逆転弾。正木智也の意地が詰まった放物線は、必ず日本一につながっている。
(竹村岳 / Gaku Takemura)