周東が打席の中で重ねた修正
自身の頭を3度、ヘルメットの上から強く叩いた。負けられない短期決戦の中で、周東佑京内野手が9回の打席で見せた一つの仕草。その直後に生まれたのは、チームのサヨナラ勝ちを演出する貴重な一打だった。
15日に行われた日本ハムとのCSファイナルステージ第2戦(みずほPayPayドーム)。2-2の同点で迎えた9回1死二塁の場面だった。周東が打席に入ると、フルカウントから直球を中前に運んで好機を拡大。その後に近藤健介外野手の申告敬遠を挟み、栗原陵矢内野手のサヨナラ満塁本塁打が生まれた。
打席の中で、周東は1ボール1ストライクから外角のボール球に手を出しかけた。バットを止めた直後に首を横に振り、自らのヘルメットをパンと叩いた。この仕草には明確な理由があった。「僕がアウトになったら……」――。その瞬間、脳裏にあった思いを周東はこう明かした。
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この先で分かる3つのこと
頭を叩いた周東の脳裏にあった違和感の正体とは
「自分が決める」と臨んだ9回、近藤と栗原への配慮
栗原の劇的サヨナラ満塁弾を見届けた周東の意外な本音
「感覚が違っていたのと、打席に立つ前に長谷川コーチと喋ったことをもう一回整理しようと思って。なんか思っていた感じと違っていたので、もう一度整理して考えた、という感じでしたね」
頭を叩いたのは、打席で抱いた違和感を確かめ、自分の感覚とすり合わせるためだった。打席に入る前に意識を置いていたことがあったが、それ以上に体が反応した部分があった。思い描いていたイメージ、実際に打席で感じたもの、そしてスイングを仕掛けた時の反応……。そのズレを修正し、仕留めるべき一球に向けて頭の中を整えるための仕草だった。å
3回は“進塁打”…9回は「自分が決める」
1点差に迫った3回無死二塁で迎えた第2打席も、状況を冷静に見極めていた。「もう(二塁走者を)進めることを最優先に。ヒットが出たらいいけど、それよりも進めることが最優先でした」。結果は二ゴロで、二塁走者の正木智也外野手は三塁へ。自分の結果だけを追い求めるのではなく、“次の1点”に意識を集中させた。その結果が、近藤の同点タイムリーへと結びついた。
対して、勝負どころの9回は違った。
「9回はもう決めに行く。僕がアウトになったら近藤さんは歩かされるし、2アウトで打席に立つクリ(栗原)の気持ちも多分違ったと思うので。そこはもう『自分がしっかり決めに行く』という気持ちでした」
4番・栗原にどんな状況で回すのか。その先までを思い描きながら、まずは自分が決めるという強い意識で打席に入った。頭を叩く仕草には、勝負に向かう気持ちをリセットする狙いもあった。短期決戦を何度も経験したからこそ、状況や場面によって求められる役割が変わることを周東は熟知している。
二塁走者として見届けた栗原の劇打に、周東は「『やったー』とは思いましたけど、入るとは思わなかったです」と笑顔を見せた。サヨナラ満塁本塁打という最高の結果で、日本シリーズ進出に王手をかけたホークス。周東が打席で重ねた小さな修正が、劇的な勝利を手繰り寄せた。
(飯田航平 / Kohei Iida)