小久保監督も絶賛「あそこのワンアウトが大きかった」
三遊間の打球に迷わず横っ飛びし、正確に腕を振る。流れるように完成させたワンプレーの裏側には、師弟が二人三脚で歩んだ日々があった。
「結果的にあそこで防げたのは大きかったと思います」
こう充実の表情で振り返ったのは、2年目でポストシーズン初スタメンとなった庄子雄大内野手だった。
14日にみずほPayPayドームで行われた日本ハムとのCSファイナルステージ第1戦に「9番・遊撃」でスタメン出場。先発のリバン・モイネロ投手が2回1死満塁のピンチを招き、迎えた山縣の打球は三遊間へと飛んだ。これをダイビングキャッチ。二塁に送球して2つ目のアウトを奪った。小久保裕紀監督も「あれがなかったら、あの回は多分止まっていなかったと思う。あそこでワンアウトを取ったのが大きかった」と絶賛するプレーだった。
4回の攻撃では同点打も放ち、勝利投手となった鈴木豪太投手とお立ち台に立った。CS初スタメンという大役に「(午後)5時くらいですかね。急に心臓がバクバクし始めました。人生で一番の緊張だったと思います。あの三遊間の打球を飛びついて捕った後から、普通くらいになっていきました」と語る姿は初々しさもあった。
レギュラーシーズンで108試合に出場し、パ・リーグ3連覇を支えた24歳は大舞台でも堂々とスタメンに名を連ねた。モイネロの乱調という最大の窮地でも、チームが慌てなかったのはなぜか。そして重要な局面で飛び出した美技の裏側とは――。
このプレーは決して偶然生まれたものではない。本多雄一守備走塁兼作戦コーチだけがそう言い切れる。背景にある、積み上げてきた「失敗の克服」。庄子が肌で感じたホークスの凄みと、どんな時も継続した反復練習の記憶が明かされる。
会員になると続きをご覧いただけます
この先で分かる3つのこと
モイネロ乱調でも…庄子雄大が明かすチームが焦らない理由
「2度と同じことはしない」本多コーチが絶賛した反復練習
過去のミスを克服…本多コーチと積んだ「寝っ転がる練習」
ホークスが見せる短期決戦の強さ「焦りが見えない」
「今日は追いかける展開になりましたけど、チームとしても焦りが見えないというか、そこが一番の強みなのかなと。劣勢の状況でも勝ち越せるような雰囲気というのは、シーズン中からも感じているので。それが短期決戦でもいい方向に出ているのかなと思います。ベンチでも『1点ずつ行こう』という声が出ていたので」
シーズンで7戦6勝、防御率0.76という驚異の安定感を誇っていたモイネロが3回途中までに6安打4四死球と苦しんだ。ただ、エースの乱調にも、チームが浮き足立つことはない。後ろを守った庄子も「『状態が悪いのかな』というくらいでしたね」。選手1人1人が、自らの役割に強く集中している。短期決戦でも動じないホークスの野球に、24歳の存在はしっかりと溶け込んでいた。
遊撃手としては81試合に出場し、失策はわずかに「5」。堅実な守備力を、ともに作り上げてきたのが本多コーチだ。この日見せたビッグプレーにも、誰よりも声を弾ませていた。
「今年、飛び込んでから投げようとしてジャッグルしてしまった試合があったんですよね。そこから、わざと寝っ転がって捕ってから立ち上がって投げるという練習をずっとしてきました。大事なところで握り替えができなかった悔しさを本人が持っているからこそ、今日も冷静に処理ができたんだと思います」
「練習に対する意識の賜物」ビッグプレーを生んだ成功体験
シーズン中に積み重ねてきた努力が滲む。小さな綻びを、絶対に忘れないよう胸に刻んだ。二人三脚で続けてきた練習が、この大一番で結果へとつながった。本多コーチはさらに頬を緩ませて続けた。
「捕ってから立ち上がって、握り替えてプレーを完成させる。あのプレーは当たり前なんです。でも、過去には二塁への送球で引っ掛けてしまったことがあった。それが今日はしっかりといいところに投げていましたよね。目に見えないかもしれないですけど、成功体験を積み重ねているのは庄子の練習に対する意識の賜物です。そのプレーでも失敗したわけではなかったけど、『2度と同じことはしない』『正確に投げる』という意識があるからできることですよね」
ミスを犯してしまった後、放ったらかしには絶対にしない。己を見つめ直し、1つずつ課題を潰していくために反復練習を重ねていく。この愚直さこそ、庄子が持つ最大の強みなのだ。
3時間14分のゲームを制し「疲れましたね。また明日頑張りたいです」と前を向いた24歳。CSの初戦という大舞台、確かな練習量と妥協なき意識に裏打ちされたビッグプレーだった。
(竹村岳 / Gaku Takemura)