6日の3軍戦後…大越基監督がナインに伝えたこと
移籍して5か月。その姿は“模範”として、若鷹にも伝わっている。みずほPayPayドームで行われた3軍戦のミーティング。ナインの前で指揮官が名前を挙げたのは、山本祐大捕手だった。背番号39が野球と真摯に向き合うようになった下積み時代の原点。28歳が理想と語る「美しい所作」とは――。
5日に本拠地で行われた韓国・サムスンライオンズとの練習試合に、山本祐は「3番・捕手」でスタメン出場。左越えのソロアーチを放つなど、さすがの存在感を示した。5月にトレードで移籍して以降、3軍戦出場は初めて。「みんないいスイングをしていたし、すごく刺激になりましたね。そういう意味では(自分の中で)いい効果が生まれていたと思います」と背筋を伸ばしていた。
翌6日は休日で本人はいなかったが、妥協なき姿勢で野球に向き合う山本祐の姿は大越基3軍監督の心に深く刻まれていた。圧倒的な練習量と、隙のない準備、そして挨拶を欠かさない謙虚な姿勢――。指揮官は試合後のミーティングで、若鷹にこう伝えた。
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この先で分かる3つのこと
山本祐大の走塁…大越監督が若鷹に問いかけた一言とは
試合後も練習…大越監督を驚かせた山本祐大の行動とは
2軍時代に衝撃…山本祐大が「所作の原点」と感じた姿とは
「1軍選手がやっていて、3軍がしないのはありえない」
「昨日の山本選手の走塁、見た? 全力でやっていたよな。1軍の選手がやっていて、3軍の選手がやっていない。そんなおかしな話ないよな?」
ソロアーチを放つ前、山本祐は2度の内野ゴロに倒れていた。当然のように一塁まで全力で駆け抜ける姿を、しっかりと目にしていた首脳陣。指揮官が発言する直前には、大道典良3軍打撃コーチと井出竜也コーディネーター(野手)からも「全力疾走」について言及があった。2人に続くように、大越監督も山本祐の名前を挙げながら「凡事徹底」の重要性を説いていた。
なぜ背番号39を引き合いにしたのか。最初から山本祐の名前を挙げることを決めていたわけではない。チーム内で自然と芽生えた「当たり前」への気付きに、指揮官も背中を押されたからだった。
「今日の試合前に西尾(歩真)が声出しで『当たり前のことですけど、全力疾走だけはしましょう』と。井出コーチも試合後だけじゃなくて、練習中から同じことを言ってくれていたので。『これはいいことだ』と思って、私から山本の話をしようと思いました。みんな昨日の姿を見ているはずなので。1軍選手がやっていて、3軍がしないだなんてありえないですよね。そこだけは言わせてもらいました。言うつもりはなかったんですけどね」
山本祐が出場した5日の3軍戦は、午後6時プレーボールだった。大越監督がみずほPayPayドームに到着したのは昼過ぎで、室内練習中から打球音が聞こえてきた。全体練習が始まるよりも先にバットを振っていたのが背番号39。ゲームで見せるパフォーマンスは、妥協のない準備に裏打ちされている。さらに指揮官は、山本祐による圧倒的な練習量の裏側を明かした。
「ホームランを打った後に交代させましたけど、試合後も我々に挨拶しに来たじゃないですか。あれもすごかったんですよ。試合前から1人で打って、実際にゲームに出場して、試合後もバッティングをしていたそうです。だからあの時間まで残っていたし、それが終わったから『監督……』と挨拶に来た。1軍レベルの選手が3軍戦であろうとあれだけ走るのもそうですし、そういう姿を見てほしいですよね」
2軍時代に目にした「美しい所作」
「意識をしているわけではなかったですけど、見られているとは思っていました。そう評価されたのは嬉しく思います」。大越監督の言葉を、山本祐も真っすぐに受け取る。プロ9年目を迎えている28歳は、どんな状況であろうと手を抜かない。その原点はどこにあるのか。
「2軍生活が多かった時、怪我で落ちてきていた(主力)選手がいて、その姿がすごく綺麗に見えたんです。全力疾走をするのもそうだし、結果を残すのもそう。『これが1軍選手なんだ』と思える美しい所作でしたし、プロ野球選手のあるべき姿だなと思ったのは覚えています。人によっても違うので一概には言えないんですけど、僕にはその姿がカッコよく見えたので。ああなりたいと思ったのがきっかけですね」
DeNAでレギュラーを掴む前、若手時代に受けた大きな刺激は今も胸に刻まれている。自分が大切にしてきたことだからこそ、ホークスに移籍して新たな衝撃を受けた。柳田悠岐外野手や中村晃内野手ら、主力選手の誰しもが全力疾走を怠っていなかったからだ。
「ホークスを外から見ていた時、野球が上手い人たちが集まっていて、その人たちが毎日上手くなるためにやっているように見えていました。ミスに対しても、その1つ1つを潰していく作業をしているんだろうな、と。実際に入ってみても同じ感覚ですね。3軍の選手まで締まった野球をしているので。組織力の強さもあるんだなと思います」
パ・リーグ3連覇に大きく貢献した背番号39。「野球と一生懸命向き合うことは、自分にとっても後悔がない。子どもたちも含めて見ている人も応援もしたくなると思うので」と頷いた。1軍でも3軍でも変わらない。全力を尽くす山本祐大の姿は、どんな時も美しい。
(竹村岳 / Gaku Takemura)