こみ上げた涙「ああ、こんな気持ちになれるんやな」
ホークス2軍は16日、ファーム・リーグ西地区優勝を飾りました。鷹フルでは選手はもちろん、首脳陣にもスポットライトを当てながら今シーズンを振り返っていきます。今年から2軍監督に就任した斉藤和巳監督には、人知れず感情をあふれさせた夜がありました。「さすがに我慢できんかったな……」。指揮官として初めて抱いた感情、そして流した涙――。
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2024年から4軍、3軍と指揮を執り、今年は2軍を率いた斉藤監督。目標に向かって突き進む選手たちの背中を力強く押してきた。どれだけ遅い時間になろうとも、一人でも選手が練習をしていれば、最後まで隣で見守り続ける。試合前の練習では誰よりも声を出し、選手一人一人を叱咤激励する。誰よりも兄貴肌で、愛情と情熱を胸に若鷹の成長を願う――。それが指揮官のスタイルだ。
「やっぱり頑張っている人を見ると、一番感動する。その結果がどうこうではなくて、頑張ってる人を見るとね。それが結果に結びついた瞬間とか、一生懸命やっている人が好きやから」。そんな指揮官が今シーズン、“指導者としての喜び”を初めて強く実感した瞬間があった。「あぁ、こんな気持ちになれるんやな……」。優しい表情で明かしたのは、忘れられない1日のこと。5月13日、斉藤監督はいてもたってもいられず、テレビの前で“その瞬間”を待っていた。
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この先で分かる3つのこと
斉藤和巳2軍監督が「人生初」と明かした感動の瞬間の舞台裏
1人テレビで試合を見た指揮官から涙があふれ出た理由
2軍指揮官として初めて実感した「指導者の最大の喜び」
「藤原(大翔)が初めて1軍のマウンドに上がって、あいつが大好きな奥村(政稔2軍投手)コーチの登場曲『田園』が流れた瞬間。ここ数年で一番感動したね。その瞬間を見たくて、ずっとテレビの前におったもんな。『こんな日を迎えることがあるんだ』って」
藤原大翔投手は2023年育成ドラフト6位で入団。育成3年目を迎えた今シーズン、5月8日に支配下登録を勝ち取ると、5日後の西武戦(みずほPayPayドーム)でプロ初登板初先発を果たした。3月14日のファーム・リーグ開幕投手にも指名された20歳。「それだけ期待していたし、ずっと見てきた選手」。右腕のルーキーイヤーでもある2024年から4軍、そして3軍の指揮を執った斉藤監督は、常に成長を見届けてきた。
味わった「指導者としての喜び」
「『あぁ、指導者ってこんな気持ちになれるんや』という喜び。『人生でこんなに喜ぶことってあるんだ』って。まずは『おめでとう』という思い、そして『こういう気持ちにさせてくれてありがとう』。もしかしたら、これが2軍以下の指導者としての喜びなのかなという感じがした」
1軍のマウンドに上がる20歳の姿をテレビの前で1人、静かに見守っていた。みずほPayPayドームに流れたのは、奥村コーチが現役時代に使用していた登場曲、玉置浩二さんの「田園」。その瞬間、抑えていたはずの特別な思いが一気にあふれ出し、涙を止めることができなかった。
「なんでこんなんなるんやろう。なんか自分じゃないみたいな不思議な感じがした。さすがに我慢できんかったよ。その時はやっぱり自然とさ。立場上、特別な思いを持ってはいけないのかもしれないけど。そういう思いを持つなという方が難しい。『まさか3年目で』というのもあったし、色々と感慨深かったね」
育成入団してきた選手が支配下となり、1軍で試合に出場する。地道な努力が実った瞬間を目にする喜び――。ファームでの指導者として初めて味わうことができたのが藤原だった。もちろん指導者としての感情を揺り動かされるのは、右腕だけではない。
「2軍から1軍に行った選手が活躍したら、途中経過とかを見て、コーチたちとみんなで『誰々打ちましたよ! よっしゃ!』ってなるし。それは育成が支配下になるだけじゃなくて、支配下の選手が1軍で活躍する。それには同じような新しい喜びを感じさせてもらったから」
「正直、難しさを感じた1年」とも語った指揮官。それでも、選手たちが一歩ずつ前に進んでいく姿は、何よりも誇らしかった。3年間、泥臭く選手たちと歩みをともにしてきたからこそ辿り着けた瞬間。あの日頬を濡らした涙は、指導者として知った何ものにも代えがたい最高の「喜び」だった。
(森大樹 / Daiki Mori)