残り1イニングも…試合中にコーチの元を訪れた理由
育成ルーキーの18歳が取った行動に表れたのは、まぎれもないプロ意識だった。「まだ試合は終わっていなかったですし、同じプレーが2度も起きるのは嫌だったので」。自らコーチの元を訪れ、言葉を交わしたのは江崎歩内野手だった。残されたのが1イニングだったとしても、「まあいいや」で終わらせることはできなかった。
8月29日のファーム・リーグ広島戦(タマスタ筑後)。江崎が口にしたのは、8回の守りでのワンシーンだった。同点の2死一塁で広島・仲田の打球は右中間を突破し、フェンスに到達。中堅に入っていた漁府輝羽外野手からの送球を受ける“カットマン”の位置に、二塁手の江崎と遊撃手のイヒネ・イツア内野手が「かぶる」形となった。結果的にはイヒネが返球をキャッチしたが、連係の綻びが垣間見えた瞬間だった。
味方同士の接触があったわけでもなければ、打者走者を三塁に進ませてしまったわけでもない。言わば「些細なミス」にも関わらず、江崎が行動を起こしたのには理由があった。首脳陣が明かしたのは、18歳のルーキーに掛ける大きな期待――。そして江崎が目指すべきプレーヤーの名前に挙がったのは、球界を代表する守備職人だった。
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この先で分かる3つのこと
金子コーチが重ねる育成出身「一流プレーヤー」の正体
コーチが明かす彼が目指すべき「守備職人」の名前とは
些細な“かぶり”を江崎が「なあなあ」にしなかった理由
「まずはホームに(送球を)繋ぐつもりでカットに入って、打った選手が三塁に向かったらそっちに送ろうと思っていたんですけど。イヒネさんが隣にいるとは思っていなかったので。『今のはどうすればよかったのかな』と思って、コーチに聞きに行きました」
通常の中継プレーであれば、1人がカットに入り、もう1人がカバーに入るのが一般的だ。江崎に意見を求められた金子圭輔2軍内野守備走塁コーチは「しっかりとお互いの話を聞かないことには分からない」と前置きしつつ、江崎の姿勢に目を細めた。
金子コーチ「昔のマッキーに似ている」
「やっぱり育成という立場的にも、競争を勝ち抜いていかなきゃいけないので。試合中に聞きに来るというのは、それだけ守備に対しての意識が高い証拠だし、見ていると昔のマッキー(牧原大成)みたいですよね。あんなにガツガツはしていないけど、動きやスピード感的にも似ている感じはありますね」
金子コーチが例に挙げたのは、育成から這い上がり、一流プレーヤへと飛躍を遂げた牧原大成内野手だった。育成1年目を懸命に過ごしている18歳にとって、何よりものお手本となる存在。一方で、江崎の“可能性”について、金子コーチは他球団の守備職人の名前を口にした。
「これからプレーヤーとしてのスケールが小さくならないように、どんどんいけと。エラーしようが何しようが構わないので。今の時間は基本、育成だから色んな事を気にする必要はない。もっと可能性を広げていこうよと。(滝澤)夏央みたいになれる可能性はあると思うので」
今シーズン大きな飛躍を遂げている西武の滝澤夏央内野手は公称で身長164センチ、65キロ。168センチ、67キロの江崎にとって、確かに目指すべき存在ともいえる。金子コーチがあえて滝澤の名前を口に出したのは、それだけのポテンシャルを感じているからこそだ。
以前に今宮健太内野手は江崎を“絶賛”していた。「若い子の中で、一番ショートらしいショートだなと。久しぶりにあんな選手を見たなと思いました。伸びしろがめちゃめちゃあると思う」。斉藤和巳2軍監督も「もうひたむきに、一生懸命やっているよ。どうにか結果を残したいというところと、失敗を恐れずに頑張って、色々なことをトライしようという姿が見える」と大きな期待を口にする。
周囲からの目を江崎も十分に感じている。「ガムシャラさというか、そこが自分の良さだと思うので。それは無くしちゃいけないかなと思っています」。試合中に見せる姿勢と、秘められたポテンシャル。18歳の未来はどう輝くのだろうか。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)