津森、倉野コーチ、細川コーチが明かした舞台裏
4時間34分の激闘を戦い抜き、勝ちに等しいドローを呼び込んだのは首脳陣の“勝負手”だった。2死走者なしのケースでの、異例の申告敬遠。その判断はどのように下されたのか。
20日の日本ハム戦(エスコンフィールド)、同点の9回2死走者なしでレイエスを迎えた場面だった。倉野信次投手チーフコーチ兼ヘッドコーディネーター(投手)は駆け足でマウンドへ。津森宥紀投手と海野隆司捕手、そして内野陣との入念な話し合いは1分に及んだ。ベンチに戻った倉野コーチから言葉をかけられた小久保裕紀監督はうなずき、審判に向けて申告敬遠のジェスチャーを取った。
延長11回も同様のケースでレイエスを申告敬遠し、徹底して相手の主砲との勝負を避けたホークス。9回のマウンドで何が話し合われていたのか。倉野コーチ、細川亨バッテリーコーチ、そして津森の証言から見えてきた真相とは――。異例の作戦の舞台裏を探った。
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この先で分かる3つのこと
津森が明かした、異例の敬遠にマウンドで抱いた葛藤とは
倉野コーチがマウンドで直接伝えた、ベンチの決定事項とは
マウンドでの対話が1分間も長引いた理由…細川コーチの分析
「ランナーがいない状態での申告敬遠はなかなかないシチュエーションだったので。自分の中ではそのままレイエスと勝負するべきかどうか、ちょっと迷ったんですけど……。一発があるかないかという点で考えたら、そっち(申告敬遠)のほうがいいのかなとは思いましたね」
「決定事項」だったレイエスの申告敬遠
津森はその瞬間に抱いていた思いを正直に口にした。申告敬遠を選べば、当然サヨナラのランナーを背負う形になる。次打者に長打を浴びれば、試合が決まってしまうかもしれないリスクを天秤にかけつつ、レイエスとの勝負を避けたベンチの判断。思考を整理する時間が必要だった。
もちろん、倉野コーチはそれを見越していた。「津森に何も告げずにいきなり申告敬遠となったら、やっぱり『えっ』となるので。そこはマウンドに行って、ベンチの意図をちゃんと伝えました」。めったにないケースだからこそ、時間をかけて意思を統一した。
「一応、意思確認だけはしておきたくて。津森の反応を見ながらでしたけど、最終的にはこっちが『申告敬遠しよう』と伝えました」。倉野コーチはレイエスとの勝負を避けることは“決定事項”だったことを強調した。
ベンチで戦況を見守っていた細川コーチは、マウンドでの会話を別の面から分析した。「津森が上川畑を苦手にしていたこともあって、マウンドでの打ち合わせが長くなった面もあったと思います」。9回の場面、レイエスの後ろに控えていたのが上川畑だった。今季は初対戦となったが、過去の対戦成績は3打数1安打3四球で打率.333、出塁率.667と相性の良くない相手だった。それでも結果的には右飛に仕留め、勝負手は吉と出た。
小久保監督が「よく凌いだね。完敗だった中での引き分けなので」と語ったほど、価値のあるドローとなった一戦。同日に西武が敗れたことで、優勝マジックは一気に2つ減り、「25」となった。投手8人をつぎ込んだ死闘を乗り切ったホークス。その裏側にはベンチの思惑と、それに応えた投手陣の結晶があった。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)