6回、レイエスに痛恨の逆転2ラン「悔いが残る」
「あのボールだけが悔いが残ります」――。
偽りのない本音だった。目の前で途切れたチームの連勝。その責任を一身に背負いながらも、カーター・スチュワート・ジュニア投手の眼光は力強かった。投球内容の全てに納得できるはずはない。反省点も多く残った。しかし、長い苦悩を乗り越えたからこそ、右腕は敗戦から“何か”を学ぼうとしていた。
6日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)、右腕にとっては今季13試合目の登板だった。立ち上がりから走者を出したが、ホームは踏ませない。1点をリードした状況で、6回に突入した。1死から万波に安打を浴びると、打席に迎えたのがレイエス。真ん中に入った変化球を捉えられ、逆転2ランを許してしまった。この1球こそ、スチュワートに残った“悔い”だ。
2025年は左脇腹を痛めて1軍登板なし。1年間の“ブランク”は、自身が想像していた以上に大きかった。今シーズン序盤には初回に6失点を喫するなど、マウンド上で不安と孤独に押し潰されそうになった夜もあった。しかし、この日見せたのは「弱さ」を克服し、打者との勝負にフォーカスする姿。悪夢のような時期を乗り越え、確実に生まれている心境の変化を激白した。
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この先で分かる3つのこと
痛恨の1球に泣くも…スチュワートが見せた吹っ切れた表情の理由
相棒・山本祐大が語る外国人投手リードの極意とアバウトさの強み
長いブランクを越えて…スチュワートが辿り着いたマウンドの境地
スチュワートの表情が吹っ切れていた理由
「勝負の世界なので、楽しむというのは簡単なことではありません。これまでのキャリアで結果がついてきていた時は、コントロールできないことを心配するよりも、野球を楽しみ、満喫していた時だと思います。野球を楽しめていた時の気持ちは、今も心の中にあります。相手が打ち損じることもあれば、めちゃくちゃいい球でも打たれることがある。野球には相手がいるので、そういった意味でも今日の1球は失投だったし、反省して次に生かさなければならないです」
春先には「“1年投げない”というのは、こういうことなのか……」と苦悩も吐露していた。倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)とフォーム改善に取り組みながら、少しずつ兆しが見えているのは確か。理想と現実とのギャップに悩み、結果だけを追い求める姿はもうどこにもない。長いブランクに苦しみながらも、その道のりに充実感すら抱いている。シーズンは残り45試合。右腕の表情は、どこか吹っ切れているようだった。
「マイナスなことは考えても仕方がないので。自分の中でそうやって楽しむというプラスの方向になんとか持っていって、少しずついいものが出し始めていると思う。そういう意味では、自信を持ってマウンドに上がれているのは大きな要素なんじゃないかなと思います」
相手に対して全力で向かっていく。その熱い気持ちを、バッテリーを組んだ山本祐大捕手も受け止めていた。目の前の1球に集中できるよう、心がけていた素早い返球。バッターに考える時間を与えなかったのは、スチュワートの直球を活かすためでもあった。「立ち遅れ(させる)というのは大事なこと。気持ちよく打たせないのもピッチングの中では必要なことなので。そういう意味でもよかったところはあったと思います」。
スチュワートと山本祐大が口を揃えた「反省」
通算417試合出場と、捕手として経験豊富な背番号39。毎イニングのように、ベンチに戻ればスチュワートと言葉を交わした。「日本人でも外国人でも、抑えるために密に話をするというのは同じです。日本人はある程度『ここに投げられる』というものがありますけど、外国人は球が強くてアバウト。そこが良い点なのかなと思いますね」。四隅を突く細かさも大切だが、球の強さで押し切っていくことも1つの戦い方。四球はわずかに1つと、右腕の持ち味を存分に引き出した登板になった。
だからこそ、レイエスへの1球が悔やまれる。スチュワートが「彼がすごいバッターというのは成績を見ればわかる。結果を残している選手に対して、次は同じことをしてはいけない」と語れば、山本祐も「いいピッチングをしていただけに、6回の2点はもったいなかったと思います」と受け止めた。不安を封じ込めるためにも、これからも前だけを見て進み続けるつもりだ。
「いろんな教訓というか、忘れてはいけないイニングになりました」。口元を締め、最後にそう語ったスチュワート。結果が全ての世界。妥協なき準備をしているのなら、時には“自分を許すこと”も必要だと知った。この先、チームメートと最高の喜びを分かち合うために。自分自身がやるべきことは、もう絶対に見失わない。
(竹村岳 / Gaku Takemura)