渡邉陸が貫く“禁酒”…2軍降格の試練に漏らした本音 ビールは炭酸水へ、2人の先輩に受けた影響

  • 記者:竹村岳
    2026.08.03
  • 1軍
上茶谷大河に声をかける渡邉陸【写真:栗木一考】
上茶谷大河に声をかける渡邉陸【写真:栗木一考】

上茶谷大河にズバッと「今日調子悪いですね」

 チャンスを逃さないための「準備」は、シーズン前から始まっていた。捨て去ったのは自らの“欲”だ。「今年はそういうところにもこだわってやってみようかなと」。出番が限られる中、存在感を示している渡邉陸捕手。8年目の25歳は、進むべき道筋を見失わないように、自分の胸に確固たる誓いを打ち立てていた。

 渡邉は1日の楽天戦(楽天モバイル最強パーク)で先発出場。上茶谷大河投手とは3登板連続でバッテリーを組み、7回無失点の好投に導いた。ヒーローインタビューに応じた背番号64は「初回が終わって陸が『かみちゃさん、今日調子悪いですね。ちょっとリード、考えます』と言ってきました。本当に感謝したいと思います」とにっこり。先発に転向してから3連勝と、2人の“呼吸”はピッタリ。4歳年上の右腕をぐいぐいと力強く引っ張っている。

 8年目を迎えた今季、渡邉は13試合に出場して打率.241、0本塁打、1打点。5月にはトレードで山本祐大捕手が加入し、自分自身は2軍降格も味わった。それでも絶対に腐らなかったのは、過去の苦い失敗から学び、突き詰めてきた「準備」があるから。2人の先輩に影響を受けて、25歳の渡邉は春先から「禁酒」を始めていた。今シーズンが、勝負の年――。「やるしかないので」。はっきりとした思考のもと、そう語る口調に迷いはない。

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この先で分かる3つのこと

渡邉陸が明かす「禁酒」のきっかけとなった先輩の姿
100キロ超で痛感…渡邉陸を襲った過去の苦い失敗
2軍降格の試練にも絶対に腐らなかった渡邉陸の覚悟

あえて口にした禁酒の誓い「言えば気持ちも強くなる」

「オフシーズンにトレーニングを頑張ったので、お酒を飲んで筋肉を分解したくないなという思いつきが最初でした。あとは嶺井(博希)さんも、そういうことをやっていると聞いたので、自分もやってみようかなと。1月とかそれよりも前から(お酒は)飲んでいなかったですけど、一応自分の中ではキャンプイン(2月1日)をスタートにしています」

 35歳のベテラン、嶺井博希捕手は「揚げ物を食べない」などのルールを毎年設定しているという。その姿に感化され、背番号00は酒を絶つと決めた。「“禁酒”という響きも、なんかいいじゃないですか。意思は固いので、全然いけると思います。メディアの人たちにも言えば『やめないといけない』という気持ちも強くなると思うので」。ソフトドリンクでも、糖分が多いものは避ける。これまで飲んでいたビールやハイボールは、炭酸水へと変わっていた。

 自主トレをともにしてきた中村晃内野手の影響も大きかった。2025年のシーズン中、食事とともにすると背番号7もノンアルコールを貫いていたという。「晃さんも去年、お酒を飲んでいなかったんですよ。『今やめている』と、その時に言っていたので」。渡邉も、今年の9月で26歳になる。生活面から妥協なき準備を重ねる先輩たちを見て、自分も野球に全てを捧げたくなった。

 食事にも、今まで以上に気を遣うようになった。「衣がついているような揚げ物は食べないように。脂質を摂取するなら、いいお肉や魚の脂を心がけていますね」。2024年1月には1日7回の食事で体重は100キロを超えたが、春季キャンプの初日に疲労骨折。フィジカル面でも苦い思いは何度も味わってきた。「あの時、顔が丸すぎましたよね。なりふり構わず体重を増やしていたので、それも良くなかったのかなと」。目の前の一瞬に全てをかけるための準備は、春先から続けてきた。

上茶谷大河とハイタッチする渡邉陸【写真:栗木一考】
上茶谷大河とハイタッチする渡邉陸【写真:栗木一考】

指揮官の“褒め言葉”に「1試合でいいものを出さないと」

 5月12日に山本祐がホークスの一員となると、渡邉は翌13日に登録を抹消された。いきなり現れたライバルの存在。悔しい思いを抱いていたはずだが、25歳は必死に胸中を絞り出していた。「大事じゃない時なんてないですけど、こうなったからこそ、僕は今がめちゃくちゃ大事だと思うんです」――。2軍降格という大きな試練を前にしても、絶対に腐らなかった背番号00。アーリーワークを欠かさず、試合中もカバーリングを徹底していた。その姿には首脳陣からも評価の声が溢れていたほどだ。

 上茶谷とのバッテリーで、チームを勝利に導いた楽天戦。小久保裕紀監督も「このチャンスを逃したら1軍にいられない、という陸の必死さも上茶谷の良さを引き出しているでしょうね」と絶賛した。渡邉も「今の僕は、そこそこの結果じゃダメなんです」と自らに言い聞かせる。そのうえで、指揮官からの“褒め言葉”を受け取り、強く背筋を伸ばした。

「週に1回の出番で準備期間をいただいている分、その1試合でいいものを出さないといけないと思っています。(このスタンスは)シーズンが終わるまで続けていきたいです」

 禁酒の“解禁”はいつになるのか。「秋季キャンプとか、全部が終わってオフになった時ですね。ストレスもないし、美味しいご飯が食べられたらそれでいいです」。パ・リーグ3連覇を達成すれば、オフよりも前にチームメートと最高の美酒を味わえるはず。自分の胸に誓いを立て、ブレることなく継続する。隙を見せない渡邉陸の姿は、プロ野球選手として本当に頼もしい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)