前田悠伍は「NPBで最もピンチに強い男」 スイッチが入る意外な瞬間…海野隆司も舌を巻く“能力”

  • 記者:長濱幸治
    2026.07.20
  • 1軍
7回のピンチを切り抜け、ガッツポーズを見せる前田悠伍【写真:栗木一考】
7回のピンチを切り抜け、ガッツポーズを見せる前田悠伍【写真:栗木一考】

7回4安打無四球無失点で無傷の7勝目

 20歳の“特殊能力”が存分に発揮されたシーンだった。「どんな場面でも気持ちで負けることはないので」。ふてぶてしさすら感じさせるマウンドでの佇まい――。最大のピンチにも動じることなく、前田悠伍投手がスコアボードに7つ目のゼロを刻んだ。

 3-0で快勝した19日のロッテ戦(ZOZOマリン)。6回まで相手に二塁を踏ませることなく、快調にアウトを積み重ねていった左腕がピンチを迎えたのは7回だった。安打2本で1死一、二塁を背負ったが、表情は涼しいまま。井上を内角高めの直球で空振り三振に仕留めると、続く佐藤も低めのフォークでバットに空を切らせた。ここぞの場面での2者連続三振。7回4安打無四球無失点、8奪三振の快投で無傷の7勝目を手にした。

「もう本当に素晴らしいね。(今年の活躍は)想像以上ですよ」。試合後に球場を後にした三笠杉彦GMの表情が、20歳左腕の充実ぶりを物語っていた。特筆すべきはピンチでの無双ぶりだ。ここまで得点圏に走者を置いた場面では、35打数に対して許した安打は2本のみ。「得点圏被打率」は驚異の.057だ。これは30打数以上に限れば、12球団でナンバーワンの数字だ。なぜ前田悠はピンチに強いのか――。本人、そして海野隆司捕手の言葉から真相に迫った。

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この先で分かる3つのこと

ピンチになぜ強い? 20歳が語る「意外なスイッチ」の正体
バッテリーを組む海野隆司が明かす前田悠伍の“驚異の能力”
小久保監督も舌を巻く、3年目とは思えない覚醒のメカニズム

「ピンチの時は1つギアを上げる意識でやっていますね。1本のヒットで点が入る場面とか、そういう時には自然と力が入るので。それは自然だと思います」

海野隆司とグータッチを交わす前田悠伍【写真:栗木一考】
海野隆司とグータッチを交わす前田悠伍【写真:栗木一考】

海野隆司が証言「ピンチの時ほど四隅に来る」

 こともなげに言い切る20歳の姿には、どこか貫禄さえも漂う。前田悠の“スイッチ”が切り替わるのは、意外な瞬間だった。「やっぱり相手の応援も盛り上がりますし、それが楽しいなと。ゾクゾクするみたいな感じです」。受け取り方にとっては重圧にも捉えかねないシチュエーションを「楽しい」と言えるメンタリティーこそ、左腕の強みだ。

 この日バッテリーを組んだ海野がこう証言する。「集中力が際立っているというか、投げミスをしないので。そこが一番じゃないですか。ピンチの時ほど(コースの)四隅に来るので」。昨季は正捕手としてリーグ連覇、そして5年ぶりの日本一に貢献した29歳が舌を巻くほどの能力だ。

 得点圏被打率については「知らなかったです」と目を丸くした前田悠だが、その感覚は感じていた。「そういう時こそ強気でいけるというのは、大きいかなと思いますね。ヤバいという感情もなくて。それは高校時代からですね」。数々の大舞台を経験してきた男は、やはり強い。

 高卒3年目にして、早くも覚醒の気配をうかがわせる20歳。普段は辛口評価が多い小久保裕紀監督も「プロのトッププレーヤーに上り詰めるサイクルに入っている気がします。本当に3年目とは思えないので。すごいですね」とべた褒めするほどだ。前田悠は今後、どれだけ驚かせてくれるのか。楽しみで仕方がない。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)