誰もいない室内練習場…必ず15分前からストレッチ
手術から1か月が過ぎた。地道な日々を送る中でも、信念は揺るがない。「15分前行動」に滲み出る、プロの矜持。山本祐大捕手は今、何を思うのか。
5月12日にDeNAからトレードで加入。14試合に出場して打率.349、2本塁打、9打点と鮮烈な印象を残したが、左手を骨折して6月12日に「左手有鉤骨鉤摘出術」を受けた。すでにライブBPという段階までクリアしており、実戦復帰も少しずつ現実味を帯びてきた。「みんなと話す機会も増えてきたので、いい時間を過ごせていると思います」と表情も前向きだ。
タマスタ筑後でのリハビリ組の集合は午前9時。山本祐は15分前には室内練習場に姿を見せ、1人でストレッチを始めている。1軍という舞台から離れている今も、モチベーションをまったく見失っていない証だ。手術から1か月が経ち、背番号39が今の胸中を明かした。
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この先で分かる3つのこと
山本祐大が集合より15分も早く準備を始める理由
“仕事を休んでいる状態”と捉える危機感とプロ意識
DeNA時代の先輩から学んだ「プロは個人の集団」
「“ひとりに弱い選手”にいい選手はいないですよ」
「リハビリというのは、試合に出ていないので。“仕事”を休んでいる状況だと思っています。一概に(他の選手も)そうだとは言えないですけど、1軍から3軍まで試合は続いているので。ここにいることに『居心地がいい』と感じてしまうのは良くないですね。他の選手はゲームに出て成長をしている。そこに成長できていない状態で入っていくのは明らかにレベルを下げてしまうので。リハビリだとしても、できることをやってレベルアップするのは大切なことだと思います」
誰もいない室内練習場に姿を見せると、黙々と準備を始める。「みんな、ウエートルームでやったりしていますよ」としつつ、山本祐は自ら“ひとり”の時間を作り出している。「『今日何をやるのか』と。自分と向き合う時間にしたいので、早めに来ているのはそういう理由です」。孤独に打ち勝つのは、プロ野球選手にとっても大切なこと。困難を乗り越えてきた27歳の言葉は、力強かった。
「黙々とやること、決められたことをやるのは大事なことだと思いますね。みんなでワイワイやる時間もすごくいいと思うんですけど、いざ試合になったらバッターボックスでも守備でも1人じゃないですか。“ひとりに弱い選手”に、いい選手はいないですよ」
集合の15分前から始まる「ひとりの時間」。1日でも早く復帰するために、今の自分には何が必要なのか。そして今日をどんな日にしたいのか。常に自問自答を繰り返しているから、27歳は道筋を見失わない。すでに実戦復帰が見え始めるほどの驚異の回復力は、山本祐の妥協なきプロ意識に裏打ちされている。
DeNA時代…先輩から「教わるというよりも、見てきた」
2017年ドラフト9位でプロ入りを果たした。当時19歳。DeNAでは山崎康晃投手、戸柱恭孝捕手、佐野恵太外野手らと自主トレをともにしてきた。数々の先輩たちとプレーしてきた中で、山本祐のプロ意識はどのように作り上げられたのか。
「教わったというよりは、いろんな人を見てきました。『プロ野球選手ってどうなんですか』という会話をしたことがないので。先輩たちの所作を見ながら学んできたんだと思います。筒香(嘉智)さんをはじめ、自分の軸をしっかりと持っている選手が多かったので」
チームメートの姿をしっかりと“見る”――。捕手らしい心がけにも「あんまり興味はないですけどね。野球に対してなにをやっているか、それは見ています」と淡々と話す。レベルアップするためのヒントは、必ず日常に転がっている。年下の選手も多いリハビリ組だが「雰囲気も良くて、みんな意識高いですよ。それも見ていますしね。『あ、ちゃんとしているな』って」と、意識を向けながら見守っている。
チームメートで団結して勝利を目指したアマチュア時代。しかし、プロは個人事業主の集団だ。「最初はそこにギャップを感じましたね。プロ野球も、輪を作って勝っているように見えるけど、実際は個人個人がやることをやって勝っているので」。この世界で生き残っていくには、誰よりも高い意識で自立し、技術を磨くしかない。リハビリ組で過ごす今、9年間で磨き上げてきたすべてが姿に表れている。
「誰も庇ってくれないし、結局クビになるのは自分なので。だから頑張っています」。そう言ったところで、27歳は自らの言葉を“訂正”した。「頑張るというか、当たり前です」。これが当然という、キッパリとした口調だった。勝負のシーズン終盤、山本祐大は必ず帰ってくる。その姿は、今より何倍も成長を遂げているはずだ。
(竹村岳 / Gaku Takemura)