初登板の北斗へ…今宮健太が明かした「野手として申し訳ない」 降板後のベンチで寄り添った理由

  • 記者:長濱幸治
    2026.07.05
  • 1軍
ベンチで会話する北斗(左)と今宮健太【写真:栗木一考】
ベンチで会話する北斗(左)と今宮健太【写真:栗木一考】

初登板は2回8失点…「緊張感はもう分かった」

 ベテランの無骨な優しさが、ルーキー右腕の心を軽くした。打ちひしがれた22歳にそっと寄り添い、声をかけたのが今宮健太内野手だった。1日に支配下登録されたばかりの北斗投手が4日、本拠地で行われたロッテ戦で初先発のマウンドに上がった。しかし、夢にまで見た舞台で待っていた現実は残酷だった。

 初回、先頭打者の藤原に初球をいきなり右翼テラス席に運ばれると、2回には打者一巡の猛攻で一挙7失点。2回8失点という、苦いデビュー戦となった。特に痛恨だったのは、0-1で迎えた2回2死一、二塁の場面だ。遊撃へのゴロを庄子雄大内野手が二塁に送球するもセーフとなり、野選が記録された。そこから連続押し出し四球と安打が続き、傷口は大きく広がった。

 降板後、ベンチで呆然と試合を見つめるルーキー。そんな右腕の隣にそっと移動し、言葉を交わしたのが、この試合で出場機会がなかった今宮だった。会話は「初めてでした」と語る右腕。今宮から語りかけられた言葉とは――。そして、その理由を背番号6が明かす。

会員になると続きをご覧いただけます

この先で分かる3つのこと

・打ちひしがれる北斗を救った、今宮からの「最初の言葉」
・今宮が照れ笑いの裏に隠した、ルーキーを救えなかった悔い
・苦い初登板を糧に、ルーキー北斗が誓った「次への修正点」

「『緊張した?』みたいな感じで話しかけてくださって。僕もかなりフワフワした感じだったので、『地に足がついていない感じでした』と返すと、『結構緊張していたから。これは当たり前だから、次は頑張れ』と言われました」

 大先輩からの予想外の気遣いは、大量失点でうつむき加減だった気持ちを前に向かせた。「ベテランの選手ほど声をかけてくださったので、気持ち的には結構、楽になれました。切り替え方がめちゃくちゃ上手だなって。そういうのも学んでいかなきゃいけないと思いました」。試合後、ルーキー右腕の瞳はすでにしっかりと先を見据えていた。

「ただ興味があっただけ」

 一方で今宮にベンチでのシーンについて尋ねると、言葉の端々ににじんでいたのは内野陣を牽引する「リーダー」としての強い責任感だった。

「やっぱり野手として申し訳ないところもあったので。あそこをアウトにできていれば、彼にとってもまたちょっと違う展開だったと思うので。チームメートとしてやることやったって感じです」

 野選の場面でルーキーを救えなかったことへの思いが、ベテランを動かしていた。支配下登録からわずか3日での先発マウンド。動揺しないわけがない。連打を浴びながらも懸命に腕を振ったルーキーの姿に、ベテランの心も動かされた。

「僕も気になるので。ルーキーで育成から上がってきて、あそこ(マウンド)に立つというところに、どんな緊張感があるのかなと思って聞いてみただけです。ただ興味があっただけです」。少し照れ笑いを浮かべながら、気恥ずかしさを煙に巻いた。

 北斗にとっては苦しい初登板だったが、今宮の言葉は確かに救いとなった。「緊張感はもう分かったので、次はストライク先行でいきたい。ボール球を要求された時の高さだったり、しっかり投げ分けないと打たれることも分かりました。そこはしっかり練習していきます」。野球人生で最もインパクトの残る1日に、ベテランからかけられた言葉――。この先、どんなことがあっても忘れることはできないだろう。試合には敗れたが、ホークスの伝統がまたひとつ受け継がれた。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)