大山凌が浮かべた悔し涙「不甲斐ない」 斉藤和巳監督との“2人の時間”…打ち明けた葛藤と誓った約束

  • 記者:森大樹
    2026.06.18
  • 2軍
大山凌(右)と会話を交わす斉藤和巳2軍監督【写真:森大樹】
大山凌(右)と会話を交わす斉藤和巳2軍監督【写真:森大樹】

同点3ランを許した試合後、流れた“2人の時間”

 チームがサヨナラ勝ちを飾った試合後の室内練習場。斉藤和巳2軍監督が隣に腰を下ろし、静かに寄り添ったのは大山凌投手だった。指揮官は右腕の苦悩を受け止め、前を向くための言葉を送った。17日のオリックス戦(タマスタ筑後)。一時同点となる3ランを浴びた24歳が、試合後に浮かべた悔し涙――。自分自身と向き合っているからこそ、溢れた感情だった。

 3点リードの6回に登板した大山は無死一、三塁のピンチを招くと、右翼越えの同点3ランを許した。5月26日の巨人戦(東京ドーム)で2失点を喫して2軍降格となって以降、ファームでも4試合で計9失点。結果を残せていない現状が続いている。

 劇的な勝利を収めた6月17日の試合後、選手たちが次々と引き揚げる中で、大山は室内練習場の奥でシャドーピッチングを始めた。そんな右腕に斉藤監督は短く声をかけ、腰を下ろした。指揮官の言葉に時折下を向き、悔し涙を浮かべた大山は、“2人だけの対話”が終わってもなお黙々と腕を振り続けた。練習場を後にしたのは、試合終了から約2時間後の午後10時過ぎだった――。24歳はその夜に交わした言葉と、今抱える苦悩を明かした。

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「『どんな気持ちだ?』と聞かれて、『不甲斐ないです』って……。今はまず『ストライク先行』という1つの課題に絞ってやっているんですけど。1軍から落ちた時と比べたら感覚は出てきているけど、やっぱり何かが足りなくて。ゾーンで勝負したり、インコースに投げたりするのは、人間と人間の勝負なので少なからず勇気がいることで。でも根拠がないと、実際の場面で『打たれるんじゃないか……』と思ってしまう。そういうマインドの部分と、技術的に何が足りないのかという話をしました」

 自分自身を「とことん考えてしまう性格」と明かす右腕。投球時の感覚や胸の内を打ち明けると、斉藤監督からは「意外と繊細なんやな。練習ではとことん完璧を求めていくけど、それをマウンドに持ち込んだらいいことはないし、体も動かなくなるぞ」と声をかけられた。タマスタ筑後のメイングラウンドから室内練習場へ戻る道中も、さまざまな感情が頭を巡っていた。気づけば1人で抱え込み、腕を振っていた。そんな時に差し伸べられた言葉に、感情が溢れ出した。

「室内へ戻りながら、色々なことを考えて葛藤していました。試合中はもう何もできないので。自分のプレーについて考えるのは失礼だと思うんですけど、終わった後はプレーへの悔しさだったり、葛藤だったり……。プロ野球の世界はやっぱりシビアじゃないですか。結果を出せなかったら、自分の責任でクビになるだけなので。でも和巳監督みたいに選手を思ってくれる人がたくさんいる。そこはありがたいですね」

シャドーピッチングを続ける大山凌【写真:森大樹】
シャドーピッチングを続ける大山凌【写真:森大樹】

指揮官からの「絶対に明日、前向いてこいよ」

 斉藤監督との会話を終えると、大山は気持ちと技術の両面を整理するため、自ら1人の時間を作った。「また明日が来る。和巳さんにも最後、『絶対に明日、前を向いてこいよ』と言われたので。技術的にも、気持ち的にも切り替えるために頭の中を整理していました」。試合終了から2時間後の午後10時頃まで、自らと向き合うようにフォームを確認しながら、1時間以上シャドーピッチングを繰り返した。

「正直、1軍に行けた時は『掴んだかも』と思ったんです。ただ、その時もはっきりとした“ポイント”みたいなものを見つけきれていなくて。ぼんやり『こんな感じかな』という状態だった。それはすぐ見つかるかもしれないし、もっと先かもしれない。でもやらなきゃ見つからないので。今、苦しいところから逃げる方が楽だと思うんです。でも、自分なりに背負っているものもあるし、最後まで自分を貫きたいので」

 自らの現状を受け入れ、もう一度前を向いた。「周りからは結果だけで見られていると思うんですけど、今のこの時間は決して無駄じゃないと思うので」。室内練習場を後にする時には、球場を出る同学年の石塚綜一郎捕手から「泣くなよー」と声をかけられ、笑顔を浮かべた。悔しい夜を越えて、また1つ成長した姿を見せてほしい。

(森大樹 / Daiki Mori)

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