驚きを隠せなかった1本の電話「倉野です」
またしても果たせなかったプロ初登板。それでも、1軍の舞台で目にした光景は脳裏に焼き付いている。「知らない番号から電話がかかってきて……。留守電に『倉野です』と入っていたので。慌ててかけ直しました」。木村大成投手が、今季初昇格の瞬間を振り返った。
高卒5年目の今季はファーム・リーグでは13試合に登板して防御率5.51。決して満足のいく数字ではなかった。「あのタイミングで呼ばれるとは思わなかったので、びっくりしました。ここ何試合かは調子が戻ってきた手応えはあったんですけど……」と正直な胸の内を明かす。
驚きを隠せぬまま5月29日に1軍登録されたが、出番はなく2日後の31日に抹消となった。登板なしで終わった1軍での2日間――。首脳陣が明かした“限定昇格”の舞台裏とは。降格直前、左腕が小久保裕紀監督と交わした会話を明かした。
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この先で分かる3つのこと
倉野コーチが明かす木村大成を急遽呼んだ「本当の理由」
登板なしの2日間に木村大成が本音で吐露した「悔しさ」
降格時に小久保監督からかけられた「愛ある一言」の中身
「経験というよりは、1人でも多くの投手をベンチに入れておきたかったので。そこで(1軍に)入れられる選手を考えた時に、名前が挙がりました。もしビハインドだったら使う予定でしたよ」
昇格の背景について話したのは、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)だ。6連戦が3週間続く交流戦。31日に木村大と入れ替わる形で1軍登録されたのは徐若熙投手だったが、わずか2日間だとしてもブルペンを厚くしておきたかった。白羽の矢が立ったのが、背番号58だったというわけだ。「今回はそういう展開にならなかった。『2日限定になると思うけど……』とは伝えていましたし、分かっていて呼んだので。でもまたチャンスはあると思います」。事前から決まっていた2日間の計画だった。
木村大は、昨年7月にプロ初の1軍昇格を果たした。その際も、あくまで計画的な入れ替えで今回と同じく2日間で登録抹消。「嬉しかったんですけど、やっぱり悔しさもありました」と胸中を語っていた。1軍切符を与えられたものの、またしても「初登板」までは届かず。1年の月日も重なり、晴れ舞台のマウンドに対する思いもさらに熱くなったはずだ。
小久保監督から言われた「当たり前だ」
1軍に登録された29日の広島戦(みずほPayPayドーム)は大関友久投手が1安打完封。翌30日の同戦も2点差の緊迫した接戦となった。「2試合とも展開が良すぎたので」と木村大は苦笑いを浮かべたが、収穫はあった。「やっぱりもっと頑張らなきゃいけない、頑張ろうと思える大きなきっかけになりました」。このマウンドに自分も立たなければならない――。その思いを強くした。
「今年は特に、投手陣にチャンスがあると思いながら1軍の試合を見ていたので。『何しているんだろ……』という悔しさもありました。でも次は圧倒的な結果を残して、100%の自信を持った状態で1軍に上がりたいです」
降格の際、小久保監督からは「また待っているよ」と声をかけられた。「『もっと頑張ります』と答えたら、『当たり前だ』と言われました」と苦笑いしたが「次は絶対に投げたいです。ここで投げるためにずっとやってきたので」。そう覚悟を口にした表情には、力がこもっていた。この2日間で目にした景色は、木村大に大きな影響を与えるはずだ。
(森大樹 / Daiki Mori)