守備中にチラ見する“魔法のメモ”の正体…1、2軍が新導入 今宮健太&牧原大成が「不要」と語る深い理由

  • 記者:長濱幸治
  • 1軍
守備中にメモを見る石見颯真【写真:長濱幸治】
守備中にメモを見る石見颯真【写真:長濱幸治】

相手打者のゴロ方向がズラリ…仕掛け人に直撃

 5月30日にタマスタ筑後で行われたファーム・リーグ西武戦。この試合に遊撃で先発した石見颯真内野手は相手打者が打席に入るたび、ユニホームのポケットから“小さなメモ”を取り出しては、目を凝らしていた。時間にしてわずか数秒のことだが、その仕草はイニングが進んでも繰り返された。

 試合後、石見に話を聞くと意外な答えが返ってきた。「相手打者のゴロがどの方向に飛んでくるか、それがズラリと書かれたメモです。アナリストの方から用意されたものですね」。この取り組みが始まったのは、ほんの数試合前からだという。

 打者は対戦する投手の球種やどのコースに投げ込んでくる確率が高いかといったデータを打席の前に確認する。逆に投手は相手打者の細かなデータを頭に入れてマウンドに上がる。そこまでは一般的だが、守備中に相手打者のデータを確認するのは聞いたことがなかった。“魔法のメモ”の鍵を握っていたのは、ホークスが誇る精鋭のアナリスト部隊。1、2軍を通した新たな取り組みの理由を探った。

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この先で分かる3つのこと

石見颯真がチラ見する“魔法のメモ”…アナリストがまとめた傾向とは
導入を快諾した金子2軍コーチの教育論「全部頼り過ぎちゃダメ」
“仕掛け人”が明かした導入理由「すごくポジティブな反応だった」

「あのメモは2軍では二遊間の選手にだけ持たせていますね。フライの打球方向はなくて、ゴロだけ。右投手と左投手で別れていて、直球、変化球、2ストライク後……。特に変化がない打者の時は普通に守っていいんですけど、あまりにも打球方向が偏る打者は準備が変わるので。そのデータを頭に入れるのに加えて、自分の感性が大事になるので。それを養うためにやってみようと。失敗してもいいので」

 そう明かしてくれたのは金子圭輔2軍内野守備走塁コーチだった。2軍で始まったのは直近で、30日の西武戦が3試合目だったという。「データを全部頼り過ぎちゃダメだよと言って渡していますね」。試合中には選手がデータを把握したうえで、どんな動きをするかコーチがチェック。試合後にフィードバックを行っているという。「二遊間の選手はキャッチャーが見えるから、球種もコースも分かる。そうすれば周りへの声掛けも変わる。とにかく勉強ですね」と強調する。

石見が実感した効果「周りにかける声が増えた」

 魔法のメモの“仕掛け人”、吾郷伸之チーフアナリストはこう説明する。「1軍では2週間前(5月19、20日)のオリックス戦から始めています。ただ、あくまで強制ではなく、必要な選手に渡していますね。1軍ではある程度“決め事”として、どう守るというのをやっているので」。

 1軍では川瀬晃選内野手がメモを使っていた一方、今宮健太内野手や牧原大成内野手は「データは頭に入っているから必要ない」と言っていたという。川瀬のように途中から試合に入る守備固めの選手には有用なデータになっているようだ。

 あくまで1軍は勝利が求められる場だが、2軍は若手選手の成長を促す場でもある。「やっぱり主力選手はしっかりと相手打者の特徴まで頭に入れているので。2軍でもそこまで考えてプレーできるようになってほしいという思いで金子コーチに相談したら、すごくポジティブな反応だったので。導入してもらった形ですね」と吾郷アナリスト。メモの導入はシーズン開始当初からの案だったという。

 実際にメモを使った石見も十分な効果を感じていた。「いつもだったら自分で考えて守っているんですけど、傾向を出してもらうことで守備位置を変える根拠になったりだとか、こっちに飛んできそうだなという予測だとかができるので。自分的には楽になりましたね。メモを見るだけで周りにかける声も増えたので。『こっち飛んでくるよ』とか『少し寄るね』とか。その分、体が固まらないですし、話ながら守れるので。すごくいいなと思います」。

“目指せ世界一”を標榜し、大型補強や最先端機器の導入で球界をリードするホークスだが、選手を育てるための「細かな改革」も怠らない。選手の守備位置一つにも、確固たる根拠がある。そんな視線で試合を見るのもまた楽しみになりそうだ。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)2026.06.01