坂倉に先制打を許した直後…山本祐大がかけた言葉
先制点を奪われた直後に、誰よりも早く駆け寄った。口元を隠して、思いを伝える。その口調は「ハッキリ」としていた。30日の広島戦(みずほPayPayドーム)で先発登板し、5回2失点と粘投した前田純投手。バッテリーを組んだ山本祐大捕手が、窮地で伝えた言葉とは――。
初回からピンチが訪れた。先頭打者の名原に中前打を許すと、二盗も決められた。その後に四球を与えるなど1死一、三塁となり、4番の坂倉には中前への適時打を浴びた。週末の一戦、広島ファンの大歓声が本拠地を包み込む。一気に主導権を掴まれてもおかしくないこのタイミングで、山本祐は前田純に声をかけた。
「立ち上がりに先制点を取られちゃいましたけど、粘り強く投げてくれましたね」。試合後、背番号39は淡々と展開を振り返った。初回、浮き足立っていた左腕をどのようにコントロールしたのか。ベンチ裏で即座に交わされた「2回以降の修正策」、そして捕手として大切にする「言葉のチョイス」とは――。このワンシーンから、山本祐の“信念”に深く迫った。
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この先で分かる3つのこと
山本祐大が口元を隠して伝えた“ハッキリとした言葉”
初回をしのいだ直後…バッテリーが交わした会話の中身
細川亨コーチも絶賛…2人が合わせる“呼吸”の正体
集中力を見せてもらうためにハッキリと伝えた思い
「1点でも少なくいくことで勝つ確率は上がると思いますし、打線の状態もいいと思うので。なおさら1点でも少なく抑えたかった。あのままズルズル行きたくなかったので、そういう感じです」
初回、広島に先制点を献上し、なお一、二塁のピンチ。最少失点でしのぐため、もう1度集中力を見せてもらうために伝えた言葉だった。「追加点も取られましたけど、“その後”をしっかりと投げ切ってくれたのが良かった点じゃないかなと思います」。試合において、流れが傾くタイミングを見逃さない。捕手としての洞察力が光ったシーンだった。
前田純も山本祐とのやり取りについて「『切り替えて、最少失点に抑えることに焦点を当てていこう』という感じですね」と明かす。初回を1失点で切り抜けてベンチに戻ると、2人は再び言葉を交わしていた。技術的な意見を踏まえながら、2回以降のマウンドに上がっていたという。
「ちょっとした話ですけど『ボール球をしっかりと投げていこう』と。チェンジアップが浮いてしまったり。真っすぐが内に入ってしまったりしたので。そういう部分を見直そうみたいな話でした。(相手打線に)結構粘られてしまったので、その中でも球が甘くなってしまっていた。大量失点という形にはならず、『粘れる』というのは自分の中でも成長はあったのかなと思います」
細川亨コーチも前田純とのバッテリーを評価
プロ9年目の27歳は、ここまで通算408試合に出場。DeNA時代も含めて、何度も修羅場を乗り越えてきた。坂倉に先制打を許した直後のように、走者がいる状況で捕手が間(ま)を取っても、そんなに多くの時間を確保できない。投手に思いを伝える。限られた時間の中、「言葉のチョイス」において山本祐はどんなことを心がけているのか。
「思ったことをハッキリ言うことですね。相手(投手)の反応を見ている時間もないので、自分が感じたことを伝えるのは意識しています」
前田純の前回登板は、22日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)。山本祐がマスクを被り、5回無失点で今季初勝利に導いたが、その姿を称賛していたのが細川亨バッテリーコーチだった。「要所でチェンジアップが光りましたけど、あれも真っすぐの使い方がいいからなんです。相手に対して、しっかりと意識させることができていました」。トレード移籍から10日、初めてコンビを組んだ背番号51と“呼吸”を合わせた一戦。その存在感は間違いなく、日に日に大きくなっている。
バットでも、マルチ安打を放ち打率.378。攻守で勝利に貢献して帰路に就く前、静かに“本音”を漏らした。「純、いいボールを持っているので。うまく引き出したいんですよね」。その気持ちはきっと伝わっているはず。何より投手のため――。捕手として見せた山本祐大の表情は、優しい笑顔だった。
(竹村岳 / Gaku Takemura)