2軍から3軍へ合流…3年目中澤の現在地
ホークスの将来を担う育成選手に焦点を当てた新コーナー「未来の推し鷹」。今回は、育成3年目を迎えた中澤恒貴内野手が登場します。開幕から2軍を主戦場に戦ってきた中、突然告げられた3軍降格。悔しい気持ちを抱える中で、指揮官と交わした「会話」。そして同学年の藤原大翔投手の支配下登録に、20歳の若鷹は何を感じたのか――。その裏にあった本音に迫ります。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
開幕から2軍ではスタメン起用が多く、打率4割前後の数字を記録するなど、3年目で大きなチャンスを掴み取ろうとしていた。「本当に自主トレから自分のやってきたことが、結果として出ていたのかなと思います」。昨オフには山川穂高内野手との自主トレに参加。「誰よりも練習した」と自負するだけの量をこなしてきたからこそ、確かな手応えを実感していた。
しかし4月途中から安打が止まり、育成選手の出場枠が減ったこともあって、徐々に2軍での出場機会が減少。4月17日のファーム・リーグのオリックス戦から4試合、計13打席無安打が続き、5月3日の同・中日戦での出場を最後に「3軍に合流してもらう」と、コーディネーターから降格を告げられた。「色々な感情が湧き上がってきたんですけど……」。“何がダメなんだろう”と考え続けた中で、導き出した答えとは――。
会員になると続きをご覧いただけます
この先で分かる3つのこと
指揮官が「まずい」と危惧した、合流初日の中澤の異変
同期の支配下登録に中澤が吐露した「運と実力」への葛藤
「クビになるかも」育成3年目の若鷹を突き動かす強い焦り
「3年間で今が一番悔しいです。1年目、2年目と僕の中では少しずつレベルアップしてきたつもりで……。1年目は怪我で野球すらできていない状態でスタートしたのが、2年目後半はずっと2軍にいさせてもらった。多少打てたことも自信になって。それでオフに誰よりもやってきた自信があったので」
3軍に合流した日、試合前ミーティングでの中澤の姿は、大越基3軍監督の脳裏に深く焼き付いていた。「本当にすごい表情をしていたんですよ。良くない表情。『これはまずいな』と思って。でも、練習が始まったらガラッと変わったので」。悔しさは当然あった。それでもプロとして気持ちを押し殺し、目の前の一球に集中した。
「限られた出場機会で結果を残すのが、育成選手なので。それでも、いつ2軍に行ってもいいように準備をして。何ならもう、上がれない可能性だってありますし。ただ、今2軍に上がれていないのは実力が足りていないから。だから自分のスキルアップのために、頑張るしかないなと思っています」
再び2軍、そして1軍へ這い上がる未来を想像し、日々の取り組みを継続する。「きっと誰かが見てくれているので。どうやれば自分は上がれるのか。本当に腐らず探していけば、いつかチャンスは巡ってくるんじゃないかなと思います」。しっかりと前を見つめていた。
大越監督と2人で交わした会話「運って…」
そして、5月8日には同学年の藤原が支配下登録された。「自分はやっているつもりだけど、結果は出ていなくて。でも藤原はすぐに結果を出して(支配下に)上がっていって。やっぱり悔しいなというか」。共に支配下を目指していたライバルがチャンスを掴み、自らは2軍から3軍へ合流した現実――。その後、大越監督と2人で会話を交わしたという。
「運って巡ってくるものだとは思うんですけど、実力がないとやっぱりその運は掴めないと思う。やっぱり藤原には実力があって、それで今、1軍のピッチャーがああいう状態になって回ってきた。それも運だと思うので」
中澤が口にしたのは、藤原の実力を心から認めているからこそこぼれた言葉だった。ただ育成選手にとって、チーム状況が大きく運命を左右するのは間違いない。「藤原と僕の取り組みが違うかって言われると、僕はそんなことは無いと思うので。やっぱり悔しい。でも、だから野球が上手くなりたい」と悔しさをにじませた。
大越監督は「期待されているんだよ」と優しい声をかけた。思い悩む20歳の姿に「取り組みからしても、他の誰にも負ける気がしないという気持ちで野球をやっているから。本当に『こうなりたい』っていうビジョンもある」と目を細める。こみ上げてくる感情の大きさは、それだけ真っすぐな努力を重ねてきた何よりの証拠だった。
プロ入り時とは違う感情「クビになるかもしれない」
「育成3年目で、今の段階で3軍っていう立ち位置なので。今年で本当にクビになるかもしれない。一番焦っているし、一番悔しいし、プロに入った時とは全く違う気持ちになっているんですけど。でも、もう『上手くなるぞ』って気持ちしかないので。本当にやるだけだと思っている。そういう気持ちです」
試合後は、人の気配が少なくなった筑後の室内練習場でバットを振り続ける。「『あれだけやってきたんだから絶対大丈夫』という気持ちにもなると思います。今は切り替えてやっていくだけです」。プロの世界では必ずしもその努力が報われるとは限らない。でも必ずその姿は誰かが見ている。中澤恒貴をこれからも追いかけていきたい。
(森大樹 / Daiki Mori)