谷川原が放ったサヨナラ打…そのボールの行方は?
劇打の裏で、日頃の思いが込められた行動があった――。ソフトバンクは8日、ロッテ戦(みずほPayPayドーム)に6-5で逆転サヨナラ勝ち。9回2死二塁、試合を決めたのは谷川原健太捕手だった。「本当に打てて良かったです。めっちゃ嬉しかったです!」。興奮冷めやらぬ試合後、谷川原の右手に大切に握られていたのは、サヨナラ打の記念ボールだった。
2点を追う9回。先頭の栗原陵矢内野手が9号ソロを放って1点差に迫ると、1死から野村勇内野手が左前打で出塁。さらに2死後に盗塁を決め、牧原大成内野手が起死回生の同点適時二塁打を放った。「かっこいい先輩たちが打っている姿を見て、僕も打ちたいと思いました」。9回2死二塁、谷川原が横山の投じた4球目の直球を振り抜き、打球は右翼線へ弾んで決着。チームに今季初のサヨナラ勝利をもたらした。
「サヨナラは人生初ですね」。初めて味わうナインからの手荒い祝福。印象的だったのは、試合後の囲み取材で谷川原の手元にウイニングボールがあったことだ。「そこでボールをもらったので」。回収したのは“ある1人の裏方”だった。歓喜の中、グラウンドに転がっていった“最後の1球”を手渡した行動には、どのような思いが込められていたのか――。
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この先で分かる3つのこと
記念球を回収し手渡したワケとその正体
悔しさを笑顔に変える、谷川原の「真の強さ」の源
ベンチ裏で交わされた裏方と選手の「熱き絆の物語」
「ボールが返ってきたかどうか、ボールの行方はなるべく確認するようにしていて。それに僕の記憶の中では、タニ(谷川原)がサヨナラを打った記憶がなかったので。何かの記念になればなと思って」
そう振り返ったのは、柳瀬明宏打撃投手兼広報だ。サヨナラ打の後、ヒーローインタビューを終えた谷川原にベンチ裏でボールを手渡したという。柳瀬打撃投手は2006年にホークスへ入団。最速148キロの直球とフォークを武器にセットアッパーとして活躍し、通算52ホールドを記録した。2017年に阪神へ移籍し、その年限りで現役を引退。2018年6月からはホークスで広報兼打撃投手に転身した。
そして本拠地での試合前練習では、谷川原の打撃投手を務めている。「もちろん、誰が打っても嬉しいです。でもやっぱり、普段から投げている選手が打ったら特別に嬉しいですよね」。日頃から支えてきた選手の活躍。この劇打に特別な感情がないはずがなかった。
「強い気持ちを感じる選手」…もどかしさの裏で見せた姿
「姿もずっと見てきた。ここ数年、『レギュラーを獲る、絶対獲ってやるんだ』という強い気持ちを僕の中でも感じている選手の1人だったので。本人も、なかなか結果が出ない悔しさはあると思うんですよ」
谷川原自身、捕手としてもどかしい時間が続いていた。開幕からカーター・スチュワート・ジュニア投手、徐若熙投手の登板試合を中心にマスクを被ってきた。しかし両投手の不振による登録抹消もあり、ここまでスタメンマスクは5試合。途中出場が続いている。それでも悔しさを表に出すことはなく、持ち前の明るさでチームを盛り上げている。
「性格が明るいやつなんで。悔しい思いも練習中に見せず、常にみんなを盛り上げている。その中で自分のこともしっかりやれている。それが強さの1つだと思います」。チームを盛り上げる裏で、ずっとひたむきな頑張りを近くで見てきたからこそ、より嬉しかった一打だった。
「あいつには頑張ってほしいですし、頑張ってくれると思いますよ。さっきもみんなにいじられてましたね(笑)。本当にナイスでした。ボールを喜んでくれたなら良かったです」。右手に握られたサヨナラ球は、日々の練習を支え、背中を押し続けてきた裏方との絆の証でもあった――。
(森大樹 / Daiki Mori)