ロッカーで見つめた6試合「何やっているんだろう」 川村友斗が味わった“初めての経験”

川村友斗【写真:古川剛伊】
川村友斗【写真:古川剛伊】

シーズン最終盤に味わった苦い記憶

「こういうことは初めてだったので。来年、悔しさを晴らしたいなと思います」。チームは5年ぶりの日本一に輝いたが、記憶に残っているのは最終盤に味わった苦い経験だった。4年目のシーズンを終え、川村友斗外野手が2025年を振り返った。

 2年連続で開幕1軍スタートを果たしたが、5月の2軍戦で右手有鉤骨を骨折し3か月の離脱を強いられた。1軍ではわずか15試合、ウエスタン・リーグでも37試合の出場にとどまり、「今年は野球をやっている感覚がなかった」と思いを吐露するほどだった。

 それでも10月は秋季教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」で調整をしながら、ポストシーズンでの出番を目指した。好結果を残し、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージの直前に1軍に合流した。宮崎から福岡の地へ――。しかし待っていたのは、もどかしい現実だった。

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続きの内容は

・CS全6戦の「やるせない感情」の正体
・支配下選手として味わった「悔しさ」
・「来年ダメなら終わり」勝負の5年目にかける具体的目標

「ずっとロッカーで見ていました。6試合。『何をやっているんだろうな』みたいな感じの時も正直ありました。チーム事情で本当に仕方ないのはわかっているんですけど、初めての経験というか。やるせない感じでした」

 本拠地で熱い試合が繰り広げられる中、ベンチ裏にあるロッカールームでテレビ中継を見ていた。自分自身に対して唇を噛んだ6日間。CSファイナルが終わるとまた宮崎へ戻り、フェニックス・リーグで調整を続けた。その後、日本シリーズの40人枠に入るも出場は叶わなかった。

「育成の時にチームが勝っているのを見るのとはまた違って。支配下選手として、リーグ優勝や日本一の時にその輪にいれなかったのは悔しかったです」。育成から這い上がり、努力を重ねてきたからこそ、日本一の場にいられない自分へのやるせなさが増幅した。

誓ったレベルアップ「監督に求められる選手に」

 それでもフェニックス・リーグでは「もし日本シリーズに出られなかったら、この残り数試合でシーズンが終わってしまう。絶対に良い形で終えたいです」と悔しさを胸に秘めて前を向き、黙々とバットを振り続けていた。

 来年に向けては「だからこそ走攻守すべてでレベルアップしないといけない」と1軍定着へ言葉に力を込める。「やっぱり監督に求められる選手にならなきゃいけない。どこか突出するとかではなくて、全部です」と冷静に自身の現在地を見つめていた。

「今年は怪我もあり、調子も上がらなくてずっと2軍だったので。勝負の5年目になる。もう来年ダメだったら終わり、それくらい本当に後悔なく過ごせる1年にできたらなと思います」。たくさんの悔しさを味わった2025年――。だが、この経験が川村友斗を間違いなく強くする。

(森大樹 / Daiki Mori)