斉藤和巳監督が呼び止めた20分間 気になった姿…廣瀬隆太に伝えた厳しい言葉

斉藤和巳3軍監督(左)、廣瀬隆太【写真:森大樹】
斉藤和巳3軍監督(左)、廣瀬隆太【写真:森大樹】

斉藤3軍監督が廣瀬にかけた言葉

 大きな期待をしているからこそ、寄り添い、かけた言葉があった。宮崎での秋季教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」で試合が雨天中止となり、選手たちが室内で汗を流していた日のこと。チームを率いた斉藤和巳3軍監督が呼び止めたのは、2年目の廣瀬隆太内野手だった。

 廣瀬は今季も1軍を経験したものの、7月22日に出場選手登録を抹消され、そのまま2軍でシーズンを終えた。そうした状況で臨んだ10月のフェニックス・リーグ。目標はもちろん、日本シリーズ出場資格を持つ「40人枠」入りだった。その一心で結果にこだわり、二塁手として試合に出続けたが、10月24日に発表されたメンバーに名前はなかった。

 その翌日の出来事だった。タマスタ筑後で顔を合わせる機会はあったが、「今まであまり関わりはなかった」という2人。室内練習場の中央で、約20分にわたって真剣な表情で言葉を交わした。この期間、初めて本格的に向き合った指揮官の目に、24歳の姿はどう映っていたのか。そこには、期待ゆえの厳しい言葉と、未来への温かなまなざしがあった。

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続きの内容は

・斉藤監督が廣瀬に伝えた「厳しい言葉」とは
・廣瀬が語った、監督の言葉への「真摯な受け止め」
・武者修行へ向かう廣瀬の「本当の戦い」の始まり

「自分が思っている形でプロ生活が進んでいないと感じるかもしれない。苦しみ、もがきながら前に進もうという気持ちは持っている。ただ、その気持ちは伝わってくるんだけど、ふとした瞬間に自分をコントロールしきれていない時がある」

 指揮官の目に映っていたのは、グラウンドでの一挙手一投足に感情が表れる“行動”だった。多くは語らなかったが、「1軍で結果を残す、レギュラーになるためには、そういう部分が大事になる」と、自分自身と真正面から向き合うことの重要性を伝えたかった。

「誰しも長所と短所がある。1軍選手に短所がないわけではない。だからこそ長所は思い切って伸ばしていっていいけど、短所にもきちんと向き合う。自分の短所から目を逸らさずに、それが何かを理解する必要はある」

 グラウンドでのプレーを見て感じたことは間違いなくあった。それでもどこか優しい表情でこう続けた。「もちろんマイナスなところだけを見るのは、お互い(選手も指導者も)しんどいわけで。でも隆太にも長所はしっかりあるんやから」。それは、まぎれもなく期待の表れだった。

廣瀬はどう受け止めた?「行動に移すだけかなと…」

「来年はセカンドのレギュラーを獲れよ」。斉藤監督はフェニックス期間中、そう言って力強く背中を押してくれたという。「すごく気にかけてくださるので、気持ちの面が大きいですね。前向きな言葉をかけてくれるんです」。その日以降も、斉藤監督は汗だくでノックを受ける背番号「33」の姿を、真っすぐに見守っていた。

 廣瀬自身は「あとは行動に移すだけかなとは思うので」と真剣な表情で、この出来事を受け止めている。プエルトリコでのウインターリーグに参加するため、4日に海を渡った。斉藤監督から受け取った言葉を胸に秘め、向かった武者修行。廣瀬隆太の本当の戦いは、もう始まっている。

(森大樹 / Daiki Mori)