2年間のリハビリ…どん底で救われた恩師の言葉 復帰直後の内野海斗に訪れた“別れ”

内野海斗【写真:森大樹】
内野海斗【写真:森大樹】

育成3年目の内野が振り返る長いリハビリ生活

「久しぶりに野球をやっている感じで、本当に楽しいですね」。マウンドに立つその表情は、野球ができる純粋な喜びに満ちていた。こう語ったのは、長いリハビリ期間を越えて今季復帰を果たした育成3年目の内野海斗投手だ。

 2年目の春に腰椎分離症、直後には右肩の炎症を発症し、1年以上にわたりリハビリ生活を送った。今年も春季キャンプで右肩の違和感が再発するなど、復帰が近づくと故障を繰り返した。それでも苦難の日々を乗り越え、6月には約2年ぶりの実戦復帰を果たすと、9月15日のくふうハヤテ戦では初の2軍戦登板も果たした。

 長かった復帰までの道のり――。その姿を誰よりも見守ってきたのが、森山良二リハビリ担当コーチ(投手)だった。しかし10月7日、球団は森山コーチに来季の契約を結ばないことを通達。ようやく2軍初登板を果たし、これからという矢先の出来事だった。内野にとっては、あまりにも突然の別れ。長きにわたって支えられた師への思いを、21歳が明かした。

 7日、ネットニュースで森山コーチの退団を知った。「自分が復帰した姿をまだ全然見てもらえていないのに……。最後まで見てもらえると思っていたので、『ちょっと早いよ……』って」。思いもよらぬ知らせに、ショックを隠しきれなかった。

 10日の朝、筑後へ挨拶に訪れた森山コーチから直接、別れを告げられた。「もう僕も3年目なので。この時期はいろいろな別れがあるのは仕方ないと分かっているんですけど、それでもやっぱりつらかったですね」。森山コーチの口数はいつも通り多くはなかったが、目を見て「頑張れよ」という言葉をかけられた。「恥ずかしくない姿を見せられるように頑張りたいです」。別れ際の一言に、新たな決意を込めた。

心に刻まれている“言葉”

 3年間で内野の心に最も深く刻まれているのは、「病は気から」という言葉だ。森山コーチは常に「暗くなっても仕方ないぞ。そんな顔しとったら治るもんも治らんぞ」と、明るく選手たちを励ましてきた。

 1年以上、試合で投げることができず、故障を繰り返す日々。「もう落ちようと思ったら本当にどこまでも落ちられる、みたいな気持ちの状態でした。気持ちの浮き沈みが結構激しくなって、怪我が良くなってもまた痛くなって……。メンタル的にはやっぱりしんどかったです」。

 そんな中でも森山コーチは真っすぐに向き合い、声をかけ続けてくれた。「それに救われました。気持ちが落ち込まないよう、ずっと支えてくれた。すごく自分の中で心の支えになりました」。師はチームを去ったが、その言葉は今も心に深く刻まれている。

 心から野球を楽しめるようになった今、1球1球に感謝を込める。「次に会う時には、いい投球が見せられるように頑張ります」。いつか、成長した姿を必ず見せる。

(森大樹 / Daiki Mori)