イヒネが始めた新しい試み
室内練習場に響いたチームメートからの驚きの声――。22日、秋季教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」の日本独立リーグ選抜戦が雨天中止となり、室内で練習が行われた。広い練習場の片隅で、イヒネ・イツア内野手が外野手用グラブを片手に“レーザービーム”を披露し、周囲を騒然とさせた。
今季は2軍で主に遊撃手としてチーム最多の110試合に出場し、打率.259をマーク。リーグ2位となる30盗塁も記録した。誰もが認める“成長の1年”を過ごした21歳が、勝負の4年目に向けて新たな挑戦を始めた。
「(フェニックス・リーグの)最終クールは外野で4試合やってみて、どんな感じかを見てみようと思っています」。2025年の最終盤に突如始まった「外野手・イヒネ」の試み。その裏側には、球団と本人に共通した明確な思いがあった――。
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続きの内容は
・イヒネ選手が語る、遊撃への「意外な本音」
・外野挑戦の裏に隠された「球団の狙い」とは
・井出コーチが明かす、起用法の「真の可能性」
「元々(高校の時に)外野をやっていたからね。どのぐらいできるのか。あくまで決まったわけではなく、来年に向けた指針、方向性を立てるためですね。そっち(外野)で出られる可能性もあるかもしれないですし、両方やるかの見極めも含めて。実戦で見てみたいなというのがあったので」
こう明かしたのは、この日イヒネと共に外野練習に取り組んだ井出竜也コーディネーター(野手)だった。2軍選手にとって、フェニックス・リーグは1年最後の実戦となる場。外野手でイヒネを試すプランが本格的に浮上したのは、このリーグが始まった中盤だったという。
「ショートだけとなると、あのエラー数ではまだ厳しいところもあるだろうし、外野なら足もある。盗塁の数を今年は一気に増やしてるので。そうなってくると、また違う意味で1軍にいられる可能性がある」
今季、明らかに成長を遂げた21歳だが、2軍では22失策を記録した。1点が勝敗に直結する1軍の重要な場面では、すぐ起用するのは難しい可能性がある。その一方で、2軍でリーグ2位の30盗塁を記録した俊足は間違いなく武器になる。今季1軍で100試合以上に出場した緒方理貢外野手や佐藤直樹外野手も、試合終盤での守備固めや代走での起用が目立った。
「レギュラーだけが1軍じゃないので。控え、後から行くっていうところも含めて1軍で出られる場所というところの見極めですね」。井出コーディネーターの言葉の根底には、ドラフト1位のポテンシャルを1軍の舞台で輝かせたいという期待が改めて見えた。
イヒネが語ったこと「試合に出て躍動して…」
「どこかでやるかもしれないという話は少しあったので」。イヒネは外野手用グラブを持参して、フェニックス・リーグに臨んでいる。球団から「世界一のショートになってほしい」と高い潜在能力を評価されて入団した逸材。これまで守ってきた遊撃へのこだわりを尋ねると、純粋な思いが見える言葉が返ってきた。
「(1軍の)試合に出て躍動していくっていうのが一番の目標なので。その中でどこで出れるかはまだ全然わからないし、出られる場所で勝負していきたいだけですね」
どんな形でも1軍の試合に出たい。口にしたプロ野球選手としての純粋な“渇望”。この挑戦がイヒネ・イツアという選手にとって1つの大きな飛躍のきっかけになるかもしれない。
(森大樹 / Daiki Mori)