セカンドアップ中に垣間見えた“ほっこりシーン”
最終決戦の直前、ひりつくような緊張感が場を包む中で、グラウンド上にほっこりとした光景が広がった。20日に行われた日本ハムとのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第6戦。勝った方が日本シリーズ進出という大一番で垣間見えたシーンに焦点を当てる。
試合前練習が終わり、ホークスナインがセカンドアップを始めた午後5時半ごろ。固い表情を浮かべる柳町達外野手の肩に手を当て、微笑みを見せたのが今宮健太内野手だった。後輩の緊張を解くチームリーダーの姿を思い浮かべがちだが、その真相は想像の斜め上をいくものだった。「お前、いい加減にしろよ」――。
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今宮が柳町に託した“真の思い”とは?
柳町が明かす先輩への「意外な返答」
二人が迎える“頂上決戦”の舞台裏
「『お前、もうきょう打つなよ』って言われました。『お前、いい加減にしろよ。打ち過ぎだから』って」
今宮からかけられた言葉は、まさかの“苦情”だった。先輩からの意外過ぎる一言に「任せてください、打てないので」と返答したという柳町。泣いても笑っても全てが決まる一戦を前に、ほのぼのとした空気が流れていた。
CSファイナルは全6戦で打率.417をマーク
言うまでもなく、CSファイナルステージで打線をけん引したのは柳町だった。15日の初戦から4試合連続マルチ安打をマーク。第5戦も1安打を放ったが、第6戦だけ無安打に終わった。結果だけを見れば先輩の言葉が現実のものになってしまったが、全6戦で打率.417を記録。その貢献度の高さは議論の余地もないところだった。
もちろん、今宮の言葉は額面通りではない。普段から笑顔でコミュニケーションを取る2人の関係性があってこそのやり取りだった。「緊張するところで、ふざけすぎたなと思いました」。そう言って表情を崩した柳町の様子を見ても、それは一目瞭然だ。
今宮自身、20日の試合は先発を外れた。だからこそ、打線のカギを握る後輩の活躍を願っていた。「とにかく最後に勝てればいい」と口にしていたベテランの“愛情”を受けた柳町は「気遣ってくれたんだなとは感じました」。思いをしっかりとくみ取っていた。
開幕から故障者が続出した中で、何度もチームを救ってきた柳町。対照的に、故障続きで満足のいくシーズンを送れなかった今宮。それぞれの思いを抱いた2人が臨む“頂上決戦”。今度こそ、グラウンドの上で笑い合う姿を見たい。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)