“今季絶望”から1軍合流へ 正木智也が耐えた不屈の6か月…真っ先に明かした「本音」

正木智也【写真:森大樹】
正木智也【写真:森大樹】

14日から正木智也が6か月ぶりに1軍合流する

「今季絶望」からここまで這い上がってきた。13日に行われた秋季教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」の斗山戦(韓国)。4番・一塁で先発した正木智也外野手は試合途中に着替えを済まし、一足早く球場を後にした。宮崎空港から福岡へ。戦いの舞台に向かう準備は整った。

 試合の5回を終えると、正木はベンチに下がった。チームメートやスタッフに1軍合流を報告し、力強く握手を交わした。「頑張れよ」。激励を受けるたびに笑みを浮かべながらも、その目には覚悟が宿っていた。

 怪我に泣かされた1年に「最後のチャンス」がやってきた。4月18日の西武戦(ベルーナドーム)で左肩を亜脱臼し、「左肩関節バンカート修復術」を受けた。全治5~6か月の見立ても、決してあきらめることはなかった。9月上旬の4軍戦で実戦復帰を果たすと、フェニックス・リーグでもきっちりと成績を残してみせた25歳。凛とした表情で口にしたのは、偽らざる本音だった。

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続きの内容は

正木智也が語った、怪我からの復帰を支えた「意外な真実」
小久保監督が言及した、「正木の起用法」への本音とは
困難なリハビリを乗り越え、正木が進化した「肉体」

「今までリハビリや2軍でやってきたことを出すだけかなと思うので。怪我明けとかは関係ないですし、あとは結果を出すだけです」

 球場を後にする直前、一言目に発したのは、6か月という時間を経てようやく辿り着いた舞台への喜びだった。「最初は今季絶望だと思っていたので。まずはそこを目指してやってきた。素直にうれしいです」。

 それでも安堵の表情は一瞬だけだった。すぐさまその顔を引き締めると、「ここからもう1段階頑張るだけかなと思うので。1軍に呼ばれてゴールじゃないので。結果を出すのがゴールだと思う。そこを目指してやりたいなと思います」。クライマックスシリーズ、そして日本シリーズでの活躍に向け、力強く言葉を紡いだ。

フェニックス最終打席にかけた“思い”

 今も外野守備に制限がある正木に残された道は、代打での勝負だった。小久保裕紀監督も、これまで正木の1軍復帰に言及し続けてきた。「本当に代打で必要となれば、帰塁ができないといけないですからね。その分、足(代走)もいるじゃないですか」。プレーへの制限に懸念を示すコメントがあったのも事実だ。

 それでも正木は目の前の1試合、1打席で結果を求め続けた。「結果にこだわって。あとはもう『首脳陣に決めてください』という状態にしたい」と口にし、7日の四国ILplus戦では特大の本塁打をマーク。13日の斗山戦でも初回に2点適時二塁打を放つなど、圧倒的な打棒を発揮した。

 フェニックス・リーグでの最終打席となった同戦の第3打席。中飛に終わったが、正木にとってはただの凡打ではなかった。「最後は『代打のような気持ちでいけ』と言われていたので。準備はしてきたつもりなので、あとはやることをやるだけかなと思います」。CSでも可能性が高い代打起用にも自信を口にした。

有言実行を果たした1つの目標

 簡単な道のりではなかった。離脱直後には感情を隠すことなく、「すごく悔しかった」と言い切った。長期間のリハビリの中で、様々な思いを抱えながら必死にトレーニングに打ち込んだ。「筋肉量は増えました。瞬発系のトレーニングとか、シーズン中にはできない追い込みもできたので」。強化された肉体で実戦に戻り、無我夢中でバットを振り続けた。

「1軍に行けたら、怪我をした今年の中では一番いい形で終われると思います」。有言実行を果たした25歳。6か月ぶりの1軍へ――。進化した姿を見せ、チームが日本一に輝くための“ピース”となる。

(森大樹 / Daiki Mori)