わずか4日間の1軍帯同…井上朋也に前を向かせた意外な人物の一言「めっちゃほめられた」

内野ノックを受ける井上【写真:栗木一考】
内野ノックを受ける井上【写真:栗木一考】

6月19日に今季初1軍昇格も…試合出場なく登録抹消

 実質、わずか4日間の1軍帯同だった。それでも、再び前を向くための言葉をもらった。「もう1回、頑張ろうって。そんな感じで捉えています」。井上朋也内野手はすっきりとした表情で言葉を発した。

 6月19日に今季初昇格を果たした22歳。若手とはいえ、今季がプロ5年目。相当の覚悟と危機感を胸に1軍に合流したが、交流戦残り4試合で出場の機会を得ることはできず。リーグ戦再開を前にした同26日に出場選手登録を抹消された。

 持ち前の打撃力をアピールするチャンスすらなく再びファームに戻ってきたが、井上の表情は明るかった。その理由は意外なものだった。「めちゃくちゃほめてもらえたんです!」。22歳に前を向かせた一言――。それは意外な人物からの言葉だった。

未来の主軸候補が見つけた“明るい未来の一歩”

「本多(雄一内野守備走塁兼作戦)コーチから守備のことをほめてもらって。前までは、ずっと怒られてばかりだったんですけど……。守りについては継続して、うまくなってきているんじゃないかなとは思っています」

 2020年ドラフト1位で入団した井上は、将来の主軸候補として大きな期待をかけられている選手だ。メーンポジションは三塁、一塁だが、今季は出場機会を増やすために外野守備にも挑戦。2軍戦では左翼、右翼を守ることもある。守備力は大きな課題の1つだった中で、本多コーチからかけられた言葉には大きな意味がある。

 井上の守備力について、髙田知季2軍内野守備走塁コーチはこう分析する。「根本的な体の使い方に変化はないんですけど、ボールの見方やグラブを出すタイミング、足の運び方や構えといった部分。そこに取り組んできた中で、結果的によくなったのかなと。ミスの仕方も変わってきましたし。取れるボールを取れるようになってきた。まだまだ改善するところはたくさんありますけど、少しずつ良くなってきているなと思います」。

 打撃が売りの井上にとって、守備力の向上は“明るい未来”への一歩となる。「いくら打っても、守るところがないと厳しいですよね。山川(穂高)以上に打てないと、DHでは厳しい。他のポジションでも打撃が同じレベルだったら、守備で選びますということになるので。そこは彼にとって大きな課題だと思います」。1軍定着への道を開く1つの武器になりえると高田コーチは強調する。

刺激になった後輩の昇格「守備もお願いします」

 今シーズン、井上の変化を感じたタイミングがあったという。「あくまで僕の想像ですけど、なかなか(野手の)入れ替えがなかった時期にポンとイヒネ(・イツア)が上がって。それが逆にいい刺激になったのか、『自分もやらないと』と思ったのかは分からないですけど、その時期から守備も『お願いします』と本人から言ってくるようになって。それまで打撃を集中的にやって、なかなか守備に目がいかない時期もありましたけど、ようやく少しずつ出てきたのかなとは思います」。

 高田コーチが指摘したのは、イヒネがプロ初昇格を果たした5月下旬ごろに感じた井上の姿勢だった。明らかに変わった目の色――。2学年下で自身と同じドラフト1位で入団した後輩の姿が、思わぬ成長へとつながっていった。

「守りで出せないと言われるような選手ではなくなってきているのかなとは思います」。そう口にした井上はさらに続けた。「オールスター明け、上がります!」。たった4日間しか味わえなかった1軍の空気。落ち込むことなく、前を向いた22歳の“有言実行”に期待は高まるばかりだ。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)