有原が今季初完封で、史上22人目の12球団勝利を達成
「やっぱり完投がなかなかできていなかった。一番うれしいです」。1日、首位・日本ハムとの3連戦の初戦を今季初完封で飾り、喜びを語った有原航平投手。「いいボールを投げられましたし、海野がいいリードをしてくれたなと思います」。試合後に右腕が口にしたのは、強気のリードで好投を引き出してくれた海野隆司捕手への感謝だった。
今季13度目の先発マウンドとなった東京ドームでの日本ハム戦。海野とは11度目のコンビだった。低めのフォークが冴え渡り、三振11個を奪った。107球の熱投で今季5勝目を挙げ、史上22人目となる12球団勝利も達成した。
試合中のベンチでは、バッテリーが頻繁に言葉を交わす姿が見られた。「狙ってきていると……」。相手の視線をいち早く察知していたのは海野だった。試合後、有原と首脳陣が称賛したリードの裏側に迫ったーー。
「(試合の)序盤で日本ハムが真っすぐを狙ってきているというのは感じていました。それは有原さんと話をしていたので」
海野が試合後に明かしたのは、鋭い”直感”だった。初回は7球中5球がストレート、3番・清宮幸太郎内野手は初球の直球を二ゴロ。そして2回先頭の野村佑希内野手には、3球目の直球を右前へ運ばれた。相手打線の狙いを感じ取ると、中盤から配球をがらりと変えた。
6回は投じた8球すべてがチェンジアップという大胆な要求で3者凡退に仕留めると、7回以降はツーシームとフォークのほぼ2球種で攻め、相手を手玉に取った。8回2死で迎えた郡司裕也捕手、そして9回2死で最後のバッターとなったフランミル・レイエス外野手は、全球フォークでそれぞれ空振り三振に打ち取った。
「バッターの打ち気を逸らしながら、うまく反応を見て投げていた。良い球を選択して投球していた」。そう評価したのは高谷裕亮1軍バッテリーコーチだった。「全体の球をしっかり操れて、良いところに決まっていた。そこが全てじゃないですかね」と、有原の制球力を快投の要因と分析した。
高谷コーチも称えた海野のリード
6回に中村晃外野手の犠牲フライで先制するも、1-0と緊迫した展開が続いた。「このまま逃げ切らないといけないというのはあった。『ランナーを溜めても、先頭を出しても、丁寧にいきましょう』という話はしてました」。試合後、海野はベンチ内での会話を明かした。
この日の有原は、11奪三振のうち多くを宝刀のフォークで奪った。海野は「本当にすごいです。すごいなと思って、受けていました」と、興奮気味に振り返る。
高谷コーチは「思い切って、突っ込むところは突っ込み、逃げるところは逃げる。しっかり逃げるというか、変化球で振らせにいくこともできていた」と海野のリードを称えた。「コミュニケーションはいつも取って、試合前も試合中もやっているので」と、信頼関係の積み重ねが生んだ好リードだった。
昨年まで相棒を務めてきた甲斐拓也捕手が巨人へ移籍し、今季からコンビを組むようになった有原と海野。「毎試合、話をしながらやってきて、有原さんのことを少しずつ分かってきた」と海野は語る。3連勝中のエースを支えるのは、進化を続けるバッテリーの絆。首位・日本ハムを追うチームにとって、大きな推進力となるに違いない。
(森大樹 / Daiki Mori)