2軍で防御率1.17…止まらぬ“無双状態”
マウンド上では冷静沈着にアウトを積み重ねていく左腕が、珍しく感情を露わにした。「『もしかしたらあるかな』っていうのは、正直めっちゃ思っていました」。不敵な笑みを浮かべたのは“無双状態”を続ける前田悠伍投手だ。
今季2軍では10試合に登板して5勝2敗、防御率は驚異の1.17をマーク。ここまで連続無失点を32回2/3まで伸ばすなど、19歳ながら格の違いを見せつける投球を続けている。一方で1軍は、12勝5敗1分けで優勝を飾った交流戦で先発投手に9つの白星が付いた。好調な先発陣に1軍昇格を“阻まれている”のが現状だ。
6月25日には、筑後のファーム施設に足を運んだ倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)と面談した左腕。口にしたのは確かな手ごたえと、首脳陣に対する「反骨心」だった。
珍しく口にした“予感”…「もしかしたらあるかな」
「『もしかしたら(1軍昇格も)あるかな』って思っていたんですけど、なかったので。次に呼ばれた時には『(首脳陣に)ギャフンと言わせたいな』っていう気持ちがめっちゃ強くなったので。ただ、まだ1軍に呼ばれていないのは現実なので。『次は見とけよ』っていう感じでここから練習して。課題を突き詰めてやっていこうかなと思ってます」
「早く1軍に上げておけばよかった」――。首脳陣にそう後悔させるほどのパフォーマンスを見せることが現在のモチベーションだ。倉野コーチから指摘されたのは、ゲーム終盤での真っすぐの力だった。「『元気な時の真っすぐはめちゃくちゃ良くなってるけど、試合終盤で疲れた時のストレートが若干落ちる』と言われました」。ルーキーイヤーの昨季よりも求められるレベルが確実に高くなっているのは間違いない。
課題を明確に認識しつつも、これまでにない手応えを感じているのも事実だ。「(連続無失点は)全く意識はしていないです。例えばエラー絡みで失点するかもしれないですし、ホームランで点が入るかもしれない。数字を意識しちゃうと、そればっかりの投球になってしまうので。自分のピッチングをしながら課題とかも試して、結果的にゼロだったらいいなっていうくらいですかね」。そしてこう続けた。
大阪桐蔭高の先輩も太鼓判「めっちゃようなっとるな」
「ホームランみたいな“事故”がない限りは、点を取られることはないかなっていう感覚はありますね」
自身の手応えが確かなのは、先輩の一言からも感じられた。大阪桐蔭高の2学年上でオリックスの池田陵真外野手からは「真っすぐ、めっちゃようなっとるな」と声をかけられた。「バッターがそう感じるということが、もう去年とは違う。もっと真っすぐも変化球も上げていかなきゃいけないんですけど、1つレベルは高くなっていると思うので。そこで満足せずに、より上げ続けていければなと思います」。
なかなか1軍から声がかからない現状に「早く投げたいなという気持ちはもちろんあります。やっぱり1軍で活躍しないと、何も始まらないんで」と本音をのぞかせる19歳。一方で、「もう呼ばざるを得ないと。それくらいになって、突き進んでいきたいなと思います」と拳を握った。昨季は苦いデビュー戦となった1軍の舞台。暴れる準備はできている。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)