首脳陣が明かす「右翼・牧原大成」の意図 「ばり怖かった」も…実は前からあった“伏線”

ロッテ戦に出場した牧原大成【写真:小林靖】
ロッテ戦に出場した牧原大成【写真:小林靖】

右翼でのスタメン出場は約5年ぶり

 予想外の起用に、敵地に駆けつけたファンもどよめいた。29日のロッテ戦(ZOZOマリン)、牧原大成内野手が「9番・右翼」でコールされた。右翼でのスタメン出場は、2020年9月20日の楽天戦(PayPayドーム)以来、実に約5年ぶりとなった。

 守備機会は、いきなり訪れた。初回先頭、藤原恭大外野手が初球を振り抜くと、打球は右翼を守る牧原大のもとへ。これを危なげなく処理し、チームに1つ目のアウトをもたらした。2-1の接戦を制し、カード勝ち越しを決めた。牧原大は「ばり怖かったです。守備のことしか考えていなかった」と、苦笑いで振り返った。

 外野手としての出場は、これが今季12試合目。中堅が11試合で、右翼でのプレーは初めてだった。サプライズ起用が伝えられたのは当日のこと。背景にはどのようなやり取りと判断があったのか。首脳陣が意図を明かした。




「今、打つ方で状態が良く、可能性がある2人だからこそ起用したい。それで牧原大を外野に回したということです。勝つための選択ですね」

 

 そう語ったのは奈良原浩ヘッドコーチだ。ロッテ戦は打率.485と相性が良く、月間打率.333と好調を維持する牧原大。そして、22日の阪神戦(甲子園)で先制適時打を放つなど、少ない出場機会をものにしていたジーター・ダウンズ内野手。この2人の打力を生かすため、「勝つための選択」として組んだオーダーだった。



 もちろん、このサプライズ起用が実現できたのは、牧原大への絶大な信頼があってこそだ。奈良原ヘッドコーチが「彼くらい経験があって、色々なポジションをやっている人間ならできると思った」と語れば、大西崇之1軍外野守備走塁兼作戦コーチも手放しで称賛した。



「勝つために彼が必要だと思ってメンバーに入れている。彼はキャッチャーとピッチャー以外はどこでも完璧だし、それにちゃんと応えてくれるから。頼もしいし素晴らしいですよ」

以前からあった右翼起用の伏線


 牧原大自身も「前からちらっとは言われていた」と、“伏線”があったことを明かす。「レフトはさすがにセカンドと景色が変わるけど、ライトなら大丈夫」というやり取りを以前から首脳陣と交わしていた。

 

 実際に右翼の守備練習に入ったのは、当日の試合前だけ。「セカンド仕様になっているので、肩(長い距離のスローイング)が難しいんですよ」と内野手ならではの難しさを口にしながらも、見事に対応してみせた。大西コーチも「練習を見ていても、上手いですよ。送球もいいし、そのまま外野におってもいいと思えるくらい」と評価する。俊足に加えて送球の正確性、何より経験値がある。


「僕はセカンド(1本)って言っていますけど『どこかをやれ』って言われたらやります。正直、試合に出ないことには始まらないので」

 自主トレ期間中にそう語っていた32歳は、常に出場機会に飢えている。どんなポジションでも対応する姿勢を貫いてきた。その柔軟性と覚悟が、首脳陣の選択肢を広げ、これからもきっとチームを救う。

(森大樹 / Daiki Mori)