
プロ3年目で初の1軍…大野が連載「極談」に登場
人気企画「鷹フルシーズン連載~極談~」に大野稼頭央投手が登場です。プロ3年目の今季、初めて経験した1軍の舞台。“生”で見て衝撃を受けた投手の存在を明かしてくれました。また、本拠地デビューを飾った試合で左腕が思わず後悔したこととは――。20歳が今感じていることを、ありのままに語ってくれました。
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「これまでテレビ越しでしか見たことがなかったので。イメージをはっきりとは掴めていなかったんですけど……。初めて生で見て『自分の思い描いている理想の投手だな』と思いました」
左腕が興奮気味に振り返ったのは、6月6日に神宮球場で行われたヤクルト戦だった。先発で8回までに球団新記録となる18三振を奪ったのが、リバン・モイネロ投手だった。「すごかったです。やばかったです。全く打たれる気がしなかったですね」。目の前で繰り広げられた圧倒的なパフォーマンス。大野が感銘を受けたのは、それだけではなかった。
プロ入り前から変わらぬ思い「こだわりはあります」
「(モイネロは)真っすぐとカーブのコンビネーションが基本ですし、自分も縦(の変化)を大きく使うピッチャーなので。あそこを理想にして、将来的には超えていけるようにやっていきたいですね」
大野自身も最速148キロの真っすぐと大きなカーブ、チェンジアップを織り交ぜる投球スタイルなだけに、今や球界屈指のピッチャーとなったモイネロは最高の教材だ。これまでほとんど会話をすることはなかったが、「1軍に上がってからは、ちょっとずつ話せるようになりました。『ナイスピッチング』と言ってもらえたりとか。これから色々とアドバイスをもらいたいです」。
1軍での登板2試合はいずれも中継ぎだった。チーム事情もあり、本人も「上で投げられるならどこでもいい」と話すが、プロ入り前からの“理想像”は今も変わらない。「先発としてのこだわりは、もちろんあります。今は置かれたポジションで結果を残して信頼を積み重ねていって、将来的には先発で投げられるようにとは思ってます」。20歳左腕にとって最高のお手本を見つけられたことは、なによりもの収穫だった。
母親も観戦した本拠地デビュー「足が震えた」
本拠地みずほPayPayドームでのデビュー戦となった11日の巨人戦は「足が震えるほど」緊張したという。大野にとって、ドームのマウンドは人生初経験だった。「(プロ初登板した)仙台は屋外の球場でしたけど、ドームは空気の圧迫感みたいなものがあって……。かなり独特でした」と初々しく振り返る。
本人が口にしたのは意外な“後悔”だった。「やっぱり演出がすごいじゃないですか。そういうのを見る余裕はあったので『大丈夫だ』とは思いました」。強心臓ぶりを口にした一方、大型ビジョンに映し出された自身の顔を見て「なんか、もうちょっと笑っててほしかったですね」。これも1軍の舞台を味わったからこそ抱いた感情だった。
母親も見に来ていたという本拠地での登板は、大野に新たな目標を与えた。「これから何度もここのマウンドに上がるんだ。ずっと投げていきたいな」。いずれかはホークスの絶対的エースとして、マウンドで満面の笑みを浮かべるその日まで――。20歳は新たな一歩を刻んだ。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)