マツダスタジアムでの通告「すごく悔しかった」
19日の広島戦後、マツダスタジアムの監督室で告げられた2軍降格に驚きを隠せなかった。「正直、想像はしていなかったです。このタイミングか……って」。渡邉陸捕手は正直な思いを口にした。
7年目の今季は開幕1軍入りを果たすと、ここまでで早くも自己最多となる25試合の出場を重ねてきた。6月に入ってからは前田純投手と松本晴投手が先発時にスタメンマスクをかぶるようになり、渡邉自身も少しずつ手ごたえをつかみ始めた中での「通告」だった。
小久保裕紀監督が降格理由に挙げたのは、シーズン前から強調していたスローイング面についてだった。「そこは監督が言われた通りだと思っています」。課題をしっかりと克服し、1日も早く1軍に戻る――。そう決意するきっかけもあったという。
「たまたま記事で小久保監督が『谷川原(健太捕手)が3番手キャッチャー』と言われていたのを見て。そこはすごく悔しかったし、かえって火が付きましたね」
松山2軍監督から伝えられた「手本になってくれ」
自身が登録抹消された20日、代わって1軍に昇格したのが谷川原だった。今季開幕戦でスタメンマスクをかぶった28歳の先輩は、渡邉にとって公私で仲のいい存在だ。実力は重々承知のうえで、開幕から1軍でマスクをかぶってきた意地もある。
現在1軍にいる捕手は嶺井博希捕手が最年長で34歳、谷川原が28歳、海野隆司捕手は27歳と、24歳の渡邉にとっては全員が年上だ。将来を考え、渡邉に経験を積ませたいという首脳陣の考えは当然これまでもあった。それでも、本人はきっぱりと口にする。「この世界で年齢は関係ないので。自分が若いからと悠長なことは言っていられない」。
下を向いている暇はない。降格後は松山秀明2軍監督からも「1軍選手として経験を積んだんだから、ここでしっかりと手本になってくれ」と声をかけられたという。
「改めて筑後に長い時間いたくはないなと思っています。この雰囲気に慣れたくはないですね。去年までの自分も少し染まっちゃっていた部分があったんですけど。上を見ていないことが普通になっちゃうので」。自らを厳しく律し、すぐに1軍の舞台に戻るつもりだ。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)