不振でのスタメン落ちは今シーズン初めて
首脳陣が下したのは苦渋の決断だった。8日のヤクルト戦(神宮)、先発オーダーから栗原陵矢内野手の名前が消えた。開幕前に右わき腹を痛めた影響で、4月17日に1軍合流。5月上旬には首痛で3試合欠場することもあったが、不振が理由でスタメン落ちしたのは今季初だった。
昨季は140試合に出場し、打率.273、20本塁打、87打点をマーク。ベストナインとゴールデングラブ賞を獲得するなど、チームの主軸としての地位を固めた28歳だが、今季はここまで打率.193、3本塁打、10打点。本来の姿からほど遠い日々が続いている。
8日の同戦は2点を追う9回2死に代打で登場し、三邪飛に倒れて最後の打者となった。試合後、小久保裕紀監督はこう説明した。「なかなかね。ちょっと(復調の)兆しがあるようにも見えたんですけど。昨日の姿を見て、今日は外しておきましょうか、と」。主力のベンチスタートはどのように決まったのか――。首脳陣の言葉から舞台裏に迫る。
「状態を上げてこないと、4番(山川穂高内野手)でさえ(先発を)外れたりしている状況ですから。そこは栗原自身も分かっていると思うので。今はやっぱり勝たなきゃいけないというところで、(チームも)模索しているところがあるので。(小久保)監督も昨日(7日の試合後)の段階で『明日は外しましょうか』と」
近藤が付きっきりでアドバイスを送るシーンも
こう明かしたのは村上隆行打撃コーチだ。7日の同戦で3三振を含む4打数ノーヒットに終わっていた栗原。普段の先発オーダーはコーチ陣の提案を受けて小久保監督が最終決定する形だが、指揮官自らが判断を下したという事実が事の大きさを物語っている。
首脳陣が栗原の復調をどれだけ願っているかは、8日の試合前練習にも表れていた。全体メニューの一環で打撃練習をこなしていた栗原が、練習終了間際に再び打撃ケージへ。“おかわり”する形でバットを振り込んだ。「状態が悪いから、一番最後に特打ちをさせました」と村上コーチが意図を語った。
主軸の状態が上がらなければ、V2は厳しいというのが首脳陣の統一見解だ。「守備では貢献してくれているし、ベンチでも声を出してくれている。バッティングは今、試行錯誤しているところなので。どちらにしても、彼の状態が戻ってこないことには、チーム的にすごく痛手なので。早く調子が上がってくるように期待しています」。奈良原浩ヘッドコーチの言葉には揺るがない信頼が表れている。
最近は近藤健介外野手が付きっきりで栗原にアドバイスを送るシーンもみられる。今後のホークスを周東佑京内野手とともに背負っていく立場も期待される28歳。このままで終わるわけにはいかない。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)