リハビリ中に感謝した愛妻の支え
普段の明るい姿からは想像できない言葉だった。入団から約半年、上茶谷大河投手は筑後では早くもムードメーカーのような存在となっている。しかし、リハビリ期間を振り返ると、「実は、1人になると『どうしよう』『あかんかも』って考え込んでしまうタイプなんです」。本音をありのまま明かした。
昨年12月、現役ドラフトでDeNAからソフトバンクへ移籍。しかし今年2月には右肘のクリーニング手術を受け、キャンプ途中からはリハビリ組での調整を余儀なくされた。
新天地での挑戦と同時に訪れた苦しい時間。それでも前向きに歩みを進められたのは、2023年シーズン前に結婚した愛妻の存在が大きかった。落ち込んだとき、心を軽くしてくれたのは“ある提案”だった。
「本当にポジティブな人で、弱気になる僕をいつも励ましてくれるんです。根拠があるわけじゃないけど、『できるやん』って自然に言ってくれるんですよね」。上茶谷大河投手は改めて存在の大きさを口にした。
常に明るいムードメーカーでも、時に気持ちが沈むことがある。「全然ダメやなって思う時もあって、考え込んでしまうこともありました。でも、そういう時に奥さんが『サウナ行こう』って言って、気を紛らわせてくれたりするんですよ。『サウナ行ったら逆に考えてまうやん!』って思うこともあるけど(笑)。でも、そうやって提案してくれます。すごいいい奥さんです」。日々かけられる言葉が、前向きな気持ちにつながっている。
現役ドラフトによる移籍の知らせを受けたのは、メキシコでのウインターリーグに参加していた最中だった。愛妻に電話で報告すると、最初は驚きながらも「よかったね。新しい環境で、新しいことできるんじゃない?」と、変わらぬポジティブな言葉で背中を押してくれたという。
「マイナスなことは一切言わなかった」。入団からの怒涛の約半年を支えたのは、紛れもなく愛妻の存在だった。「こっちもできるな、みたいな気持ちにさせられる」。
近藤&周東がくれた“きっかけ”
葛藤も多かったリハビリ期間は、学びの連続でもあった。1軍では離脱者が続出し、多くの主力選手たちとともに過ごす時間も多かった。特に印象的だったのは、復帰後初の実戦となるライブBPで近藤健介外野手と周東佑京内野手からの助言だったという。
「打者の目線で『こうした方がいいんじゃない?』とアドバイスをもらって、周囲の選手も『え、そうなんですか?』って驚いていました。僕も『まじすか』って感じで。今はデータやフォームで“正解”が定着している時代で、まったく違う視点を得られたのは大きかったですね」。投手としての自分のスタイルを見つめ直す、貴重なきっかけになった。
リハビリ組では個性的な円陣を始め、ムードメーカーとして明るく盛り上げた。「主力の方がたくさんリハビリに来てくださって(笑)」と冗談を交えつつ、「そういう機会ってないし、1軍だと聞けないこともあって、この期間だからこそ聞けることもありました。野球人生の後にも役立つようなこともある、学びの多い時間でした」と、約3か月のリハビリ生活を振り返る。
早くもチームを明るく照らす、欠かせない存在になりつつある右腕。「明るさだけが取り柄なので(笑)。必死に溶け込もうと頑張っています」。支えてくれた人の声を力に変えて――。1軍のマウンドでチームの勝利に貢献する姿を見せる。その日は、確実に近づいている。
(森大樹 / Daiki Mori)