牧原大の失策直後、尾形に駆け寄った背番号6
1か月ぶりに1軍の舞台に戻ってきた背番号6が早速、存在感を示した。右前腕屈筋群の筋挫傷から復帰した今宮健太内野手が1日の楽天戦(楽天モバイルパーク)に「6番・遊撃」でスタメン出場。4打席ノーヒットと快音は聞かれず、チームも0-3で敗れたが、守りでは今宮らしさが詰まったシーンが見られた。
場面は3点ビハインドの7回。この回から4番手で登板した尾形崇斗投手は先頭の小深田を力ないゴロに仕留めたが、二塁手の牧原大成内野手がまさかの後逸。嫌な形で出塁を許した。試合展開を考えれば、これ以上の失点は致命的となる状況。ここで右腕のもとに近寄り、すかさず声をかけたのが今宮だった。
チームリーダーの言葉に何度もうなずいた右腕は、続く浅村を中飛に打ち取ると、フランコの打席では見事な一塁けん制で小深田を刺した。結局、打者3人で片付けて無失点。しっかりとリズムを取り戻した。この場面、今宮はどんな“魔法”をかけたのか。試合後、本人が口を開いた。
「ランナーが小深田だったので。(尾形から)『走りますかね?』と聞かれたので、『別に走られたとしても、お前が抑えればいいんだから』と。エラーしたのはこっち(野手陣)の責任だったし、なんとか抑えてほしかったので。彼の持ち味は思い切りの良さですから。それを引き出してあげたいなというところでした」
さらりと口にした「そういうところが仕事なので」
プレーヤーとして第一に守備に重きを置き、自らが捕る、投げるだけでなく内野陣全体を見渡す視野を持つ今宮。だからこそ「こっちの責任」という言葉が出てきたのだろう。「そういうところが仕事でもありますから」。さらりと口にする姿は、まさに精神的支柱としての自覚を強く感じさせた。
尾形自身も“見えない力”に助けられたことを明かした。「ランナーを気にせず思い切って投げろと言ってもらえたことで、すごく切り替えられた部分があったので。試合の流れ的にも、もう1点取られたらすごく苦しくなる場面だったので。冷静になれたのは今宮さんの一言のおかげでしたし、感謝したいなと思います」。
チームはここまで12球団ワーストの35失策を記録。昨季は12球団で最も少ない53個だったこともあり、守備の乱れがいまひとつ波に乗れない状況を生み出している。今宮は合流前、こう口にしていた。
「今年に関してはディフェンス面でのミスがチームの勝敗に影響していると(小久保)監督も言っていましたし、まさにその通りだなと。自分1人が守ったところでどうかっていうのはありますけど、ショートというポジションで、そういったところを判断していけるようにとは思います」
16年のプロ生活で1637試合に出場してきた今宮。何百もの勝利と同時に、敗北も味わってきた。酸いも甘いも知るベテランの存在が、チームにとって“一本の芯”となる。3日からは交流戦に臨むホークス。上昇気流に乗る準備は整った。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)