秋広が目指す課題克服
セ・リーグの野球からパ・リーグの野球へ――。敵から味方になったからこそ見えるものがある。昨年まで中日でコーチを務めていた大西崇之外野守備走塁兼作戦コーチと、巨人から移籍してきた秋広優人内野手。いま、二人三脚で課題に取り組んでいる。
秋広は12日のトレード発表からわずか3日後、15日の西武戦(みずほPayPayドーム)で1軍昇格即スタメン出場。その後も「6番・左翼」で8試合続けて先発出場を続け、打率.261、出塁率.370と上々の数字を残している。
22歳という若さに加え、身長200センチという“大器”に、移籍から約2週間で首脳陣はどんな評価をしているのか。「他球団もそこを狙っている」――。大西コーチが指摘した「ある隙」から、秋広の明確な課題が見えてきた。
「ボールを追いかけるときに、ちょっと合わせにいくところがある。そこの隙を他球団も狙っている。もう少し捕球するところまでいち早く、素早く、抜くことなく行くようにしようと話している」
大西コーチが明かしたのは、同リーグのライバルチームの一員として秋広を見ていたからこそ気づいた“守備”だった。初動のわずかな「間」が、相手チームにとって狙いどころになっているという。
現在は、その課題克服に向けて練習に励んでいる。「捕球まで抜くことなく、いち早く行く。それが今のテーマ」と語る大西コーチ。「意識をしっかり持ってやれているかどうかを見ている。試合でまた何かが出てくれば、その都度、反省や評価をしていきたい」と秋広の成長を心から願っている。
それでも「もちろん、メインは打つこと。でも試合に出るには最低限、守れなきゃいけない」と強調する。打撃でのアピールが必要な選手である一方、守備が大きな足かせになる可能性もある。秋広にとって守備力の向上は、試合に出続けるための“条件”でもある。
村上コーチが語る打撃評価
打撃面では、村上隆行打撃コーチも「追い込まれるまでは自分のスイングをして、追い込まれてからしつこく粘る。『2ストライクアプローチ』をしっかりやっている。ガンガン振るというより、自分にできることをしっかりやってくれている」と評価。秋広自身も「ヒットの延長が長打。塁に出ることを意識している」と語り、1打席1打席に集中して臨んでいる。
周東佑京内野手が1軍に復帰し、近藤健介外野手も復帰間近だ。秋広にとっては、試合に出られる時間が限られたものに変わる可能性がある。「すごい選手がたくさんいる。負けないようにやるしかない」。トレード移籍直後から8試合連続でスタメンに名を連ねている現状は、首脳陣の期待の表れでもある。
小久保裕紀監督も秋広の可能性に期待を寄せる。「われわれも成績の出させ方、育て方を考えていかないといけない」と口にした。逸材をどう生かすか、チームとしての手腕も問われている。課題を自覚しながら、どう乗り越えていくか。移籍によって環境が変わった今こそ、秋広にとっては“変化のチャンス”であり、“進化”の始まりだ。
(森大樹 / Daiki Mori)