1軍と2軍の“違い”を打撃コーチが分析
ファームで結果を残しても、そのまますぐに1軍での活躍に繋がるとは限らない。育成から支配下登録を勝ち取り、4月12日に1軍へ昇格した山本恵大外野手だったが、いきなり厚い壁に跳ね返された。出場4試合で11打席ノーヒット。「H」のランプを灯すことはできず、26日に登録を抹消され、現在は2軍で再調整を続けている。
1軍での時間を、本人は「正直、あんまり覚えていないです。思い出したくない」と振り返る。それでもウエスタン・リーグでは打率.440、2本塁打、14打点。降格後も着実に結果を出しながら、チャンスをうかがっているところだ。
そんな山本について、村松有人2軍打撃コーチが語ったのは「1軍と2軍の違い」だった。再昇格に向けて、首脳陣が求める明確な条件がそこにあった――。
村松コーチは、1軍で求められるのは「多少ボール気味でも自分のヒットゾーンに持っていく技術」と指摘する。「1軍では“甘い球”がとにかく少ない。2軍の感覚で見極めすぎると、カウントを悪くして追い込まれ、自分のスイングができなくなる」と話した。
実際、山本が2軍に再合流した直後はボールを見すぎてしまっていたという。「選びすぎて追い込まれて、当てにいくような打撃になってしまっていた」。だが本来、山本は「角度をつけてしっかり引っ張れるバッター」。その持ち味を発揮するには、「甘い球を1球で仕留めること」が欠かせない。
「1軍では、待っていても甘い球が来ない。ウイニングショットもボール気味の変化球が来る。それを『ボールだから』と見逃すのではなく、『このボールをどうヒットゾーンに持っていくか』という考え方が必要になる」と語った。
狙い球を明確にしながらも、際どいボールへの“割り切り”と対応力。それこそが、1軍で戦う上で不可欠な資質だという。
山本が進める打撃での意識改革
2軍復帰後、山本は再び快音を響かせている。17日と18日のくふうハヤテ戦(タマスタ筑後)で3安打、2安打と固め打ちを見せた。75打数33安打、出塁率.541と、誰よりも結果を残している。「差し込まれないように、ポイントを前に置くようにしています」と、技術面でも修正を図っている。
1軍での苦しさについて尋ねると、「やっぱり気持ちですね。『打たないと』『やらないと』という思いが強すぎて……。今は『1軍でも困らないように』という準備をしています」と語った。再昇格に向けても「『継続して打っとけよ』と言われました。もう切り替えて、また1から作り直そうという気持ちです。1軍に上がったからといって満足していると思われたくない。結果はもちろん、周りからどう見られるかも意識しています」と、何倍もたくましくなった。
守備や走塁でアピールするタイプではなく、“打撃”で勝負する選手。それは首脳陣の共通認識だ。松山秀明2軍監督も「守備や走塁で途中から出られるタイプじゃない。小久保(裕紀)監督も言っていたが、打ち続けないとチャンスはない。当たり前だけど、それが2軍選手にとって一番つらいところ」と語る。
求められるのは、ただ数字を残すことではない。1軍で通用する打撃を体現できるかどうか。山本恵大の再昇格は、その一点にかかっている。
(森大樹 / Daiki Mori)