ドラ4宇野をいきなり2番に抜擢した理由とは?
鮮烈なスタメンデビューだった。その才能に期待せずにはいられない。ドラフト4位ルーキー・宇野真仁朗内野手が、ウエスタン・リーグのくふうハヤテ戦(タマスタ筑後)に、「2番・三塁」でスタメン出場した。二塁打を含む3安打1打点の活躍。試合後には、ヒーローインタビューにも選ばれるなど、訪れたファンに強烈なインパクトを残した。
「犠牲フライを含め、強引に引っ張るのではなく、センター方向を意識した基本に忠実な打撃ができている。冷静にそういうことを考えながら、スイングできているところが立派ですね。落ち着いて野球ができている印象を受けました」
試合後に松山秀明2軍監督はこう語り、状況に応じた冷静な打撃を称賛した。しかし、試合前にオーダー表を見た際には一瞬の戸惑いがあったという。「村松コーチが“2番・宇野”と書いていたので、『大丈夫か?』と確認しましたよ」と笑いながら明かす。この抜擢の裏には、村松有人2軍打撃コーチの確かな眼力と、宇野の持つ非凡な才能を見抜いたからこその明確な理由があった。
打撃コーチが見た非凡さ…「確率が本当に高い」
「2、3日の練習で、僕の球を芯でしっかり捉えていました。打つ確率が本当に高かった。ミート力があるし、きょうは行けるんじゃないかと思って2番を推しました」
その期待に宇野は初回から応えてみせた。1死から、直球を逆方向へ綺麗に弾き返して右前打。5回には中前打を放ち、6回1死満塁では右翼への犠飛でプロ初打点をマークした。さらに8回1死一塁では、右中間へ二塁打を放ち、存在感を示した。
「広角にいい打球を打てる。外角の球は反対方向へ、内角の球は引っ張って打てている。ミート力は本当に高い。今の2軍では“トップクラス”と言っていい」と、村松コーチの絶賛は止まらない。打撃投手を務めて感じたルーキーの非凡さは本物だった。
首脳陣が評価したのは打撃だけではない。松山2軍監督が驚いたのは走塁技術だった。「サードランナーの時もギャンブルスタートのサインでしたが、しっかりとタッチアップができていた。そつがないというか、僕らが思っている以上の走塁ができている。野球勘的なものはビックリした」。判断能力も求められる走塁においても高い能力を示した。「いい野球をする」と、宇野への今後の期待値をさらに高めた。
今回は“体験期間”のような位置付けで2軍に合流しており、この試合の後は一度3軍へ戻る見込みだ。それでも、わずかな期間で2軍首脳陣の目に、確かな打撃技術をしっかりと焼き付け、この抜擢と結果につなげた。
長いリハビリ「最初は落ち込みましたけど…」
スタートは出遅れる形だった。右肘の炎症により、昨秋からノースローで調整を続けていたが、春季キャンプ中の2月下旬には左手首も痛めた。「最初は落ち込みましたけど、焦らず、できることに集中した」。リハビリ期間は主に下半身の強化に励んだという。
「ウエートトレーニングをしっかりやったことが、打撃のスムーズさにつながった」。鍛え上げられた下半身は、フィットしたユニホーム越しにも明らか。その成果もこの日の結果につながっていた。
試合後、宇野は「バッティング面で言うと、強い真っすぐに対しての対応がまだできていない。そこを改善していければ、いいピッチャーでも対応できるのかなと思います」と、冷静に課題を口にした。早実時代には木製バットで昨夏の甲子園を沸かせ、高校通算64本塁打を記録したスラッガー。18歳の未来に、大きな注目が集まる。
(森大樹 / Daiki Mori)