【連載・上沢直之③】好きになった福岡の良さ 子どもとの日常…公園で起きたまさかの“世間話”

人気連載第3回のテーマは「福岡の街で感じたこと」

 人気企画「鷹フルシーズン連載〜極談〜」。上沢直之投手による第3回のテーマは「福岡の街で過ごす日常」についてです。昨年は単身で渡米し、今年から日本球界に復帰した右腕。家族との時間が増えた今、新天地での生活にどんなことを感じているのでしょうか。次回の「極談」は5月19日公開予定です。

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 ホークスで過ごすシーズンも、気づけば開幕から1か月半。現在は2児の父として、家族と多くの時間を過ごしてる。子どもの幼稚園の送り迎えも、日常の一部。自然と笑顔がこぼれる。「子どもとの時間はやっぱりいいですね」と穏やかな表情を見せた。

「福岡の街で感じたことは?」。そう尋ねると、返ってきたのは意外な言葉だった。

「福岡の子どもたちって、本当に野球が好きだなって思いました。ホークスのことをすごく知っているし、見てくれているんですよね」

 右腕が明かしたのは、公園での出来事。「子どもを遊ばせていたら、ほかのお子さんと一緒に遊び始めることがあって。すると、その子の親御さんが(近くに)来るじゃないですか。そこで『今日、野球見に行くんです』『いいですね』みたいな会話になることが多いんですよ」。

 自然に交わされた会話に対し、「多分、公園で遊んでいるお父さんたちは自分に気づいていないと思います」と笑いながら語る右腕。目の前のお父さんが「上沢直之」だと気付くのは、たいてい子どもだそう。福岡という街でホークスという存在がどれだけ大きいのか。子どもたちの反応から実感したと言います。

子どもとの時間の中で作る生活リズムとは?

 子育てでは、子どもの送り迎えを「担当」することが多い。朝早く起きて子どもを幼稚園に送り届け、その後に練習へ向かうというサイクルで日々を過ごしているという。「今はデーゲームで登板することが多いので、朝早く起きる生活に慣れておきたいんです」と語り、試合の時間帯に合わせて生活リズムを整えている。

 加えて、「ナイターから急にデーゲームになるのが苦手なんです」と、先発投手ならではの悩みを明かす。「そういうときは、ナイターの日でもなるべく早起きして午前中に体を動かすようにしています。デーゲームの生活が続いているときにナイターでの登板が回ってきたら、逆に少し遅めに起きたり。奥さんに送り迎えをお願いすることもあります」と試合に合わせた調整がある。体内時計を整え、ベストな状態で先発に臨む。そのための工夫が、日常の過ごし方にも反映されていた。

 5月1日、古巣の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)に先発した当日、国内フリーエージェント(FA)権を取得した。その心境を改めて問うと、感謝の気持ちを真っすぐに語った。

「僕を1軍で起用してくれた日本ハムの首脳陣やコーチ陣、ファーム時代にお世話になった方々には、本当に感謝しています。そして、何より家族や親には感謝しかないです。しっかり投げられる体に生んでくれてありがとう、って思いますね」

 目の前の1球に全力を尽くしながら、私生活では家族と向き合う。そんな両輪が、今の上沢直之をつくっている。

(森大樹 / Daiki Mori)