食事に「行かない方がいい」 正捕手争いが生んだ変化…渡邉陸が語る谷川原健太との関係性

鷹フル人気連載「~極談~」に渡邉が登場

 人気企画「鷹フルシーズン連載~極談~」。今回は今季7年目を迎えた渡邉陸捕手が登場します。第1回目のテーマは「正捕手争いが生んだ変化と覚悟」について。去年とは大きく変わったという“ある選手”との関係性――。厳しい闘いの日々に身を置く24歳の本音に迫りました。

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「タニさんは去年とか仲が良くて。ご飯にも結構行ったんですけど、今年に関してはないですね。あまり行かない方がいいかなと思って。普通にコミュニケーションは取りますよ。でも、1年間を通して注目されるというのもありますし、キャッチャー陣でライバルという関係は変わらないんで。バチバチにいこう、いかなきゃいけないと思っています」

 渡邉が明かしたのは、3学年上の谷川原健太捕手との関係性だった。昨季はともに2軍でプレーする時間が長かった2人。もちろん仲が悪くなったわけではないが、1つしかないポジションを争うライバルとして“仲良しこよし”ばかりではいけない。ともに一定の距離を置き、真正面から正捕手争いに臨んでいる。

渡邉陸(左)と谷川原健太【写真:冨田成美】
渡邉陸(左)と谷川原健太【写真:冨田成美】

「そこは去年と明確に違いますね。去年はタニさんから誘ってもらったりとかあったんですけど、なんか行きづらいですよね。仲良くしたくないわけじゃないんですけど、しちゃいけないというか……。難しいですね」。渡邉に初めて芽生えた感情――。それは、全力で正捕手の座を狙っている何よりもの証でもある。

 ここまで24試合を終えて、先発起用は3試合のみ。多くの時間をベンチで過ごす日々が続く中、目はどうしてもホームベースへと向かう。「やっぱり同じ投手でもキャッチャーによって配球が全然変わるので。そこは見ていますね」。マスクをかぶっていない時でも、日々勉強だ。

松本晴が語った“信頼”…「陸だからこそできる」

 渡邉にとって理想の捕手像とはどんなものなのか。「立ち振る舞いはもちろん、どっしりとしていることが大事なのかなと思います。『こいつに任せれば大丈夫だ』と思われる存在。ピッチャーもそうですし、バッテリーコーチも投手コーチも。全員をそう思わせないといけないですね」

 渡邉の強みを語ったのは、同学年の松本晴投手だった。「陸はめっちゃ投げやすいです! キャッチング、フレーミングがすごくうまいですし、投げたいと思うボールがサインで出ることも多いです。あとは『これいくんや』みたいな。結構、強気のリードというか。陸だからこそできるボールもあるので。同学年ということもありますけど、組んでいてすごく楽しいですね」。

 今春のオープン戦ではバッテリーの相性を探るため、多くの投手とコンビを組んできた渡邉。「投げやすいと言ってもらえるのは嬉しいですね」。1人1人の投手と信頼関係を築いていくことが、正捕手への近道となる。

「キャッチャーとして守備に重きを置かないと、試合に出られないことは分かっている。ブロッキングやスローイングの精度をより高めて、もっと出場機会を増やしていけるように。結果を残したいなと思います」

 今年が野球人生最大のチャンスであることは十分に理解している。あえてライバルとの距離を置き、熾烈な勝負に身を置く覚悟を決めた24歳。少ないチャンスをしっかりとものにし、鷹の正捕手を奪いにいく。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)