周東が“すごい”連発「僕には難しい」 川瀬晃の価値…栗原が見た“やりそう”な雰囲気

9回に同点タイムリーを放った川瀬晃【写真:産経新聞社】
9回に同点タイムリーを放った川瀬晃【写真:産経新聞社】

会心の一打「山川さんに胸を借りる気持ちで」

 まさに一振りでチームを救った。「とにかく気持ちで負けることがないように。追い込まれてからも変わらず、『絶対にランナーを返そう』と気持ちでは負けていませんでした」。試合途中から「4番・DH」に入った川瀬晃内野手は強い覚悟を抱いていた。「山川(穂高)さんの代わりで打席に立っているようなものでしたし。本当に胸を借りる気持ちで、自分が決めるという思いだけでした」。

 場面は2点ビハインドの9回2死満塁。川瀬は初球から7連続ファウルでマチャドに食らいつくと、8球目の真っすぐを右翼線にはじき返した。三塁走者に続き、二塁走者の周東佑京内野手もホームに迎え入れ、土壇場で試合は振り出しに。「あと1球」から起死回生の同点打となった。

 攻撃が終わり、ベンチに戻った川瀬を誰よりも早く迎えたのは栗原陵矢内野手。大きなガッツポーズを見せ、満面の笑みでハイタッチを交わした。仲間に笑みをもたらせた会心の一打。「なかなか僕には難しいなと」――。周東と栗原が口にした感謝の言葉とは。

「いや、すごいですよ。追い込まれてからあれだけファウルを打って、インコースの真っすぐを引っ張れるのはすごいなと思います。なかなか僕には難しいなと思いながら見ていたので。すごいなと。僕としてもどんな打球でも(本塁に)かえろうと思っていたので。本当にかえりやすい打球だったし、晃の集中力はすごいなと思いますね」

後輩の姿に「やってくれそうな雰囲気があった」

 何度も「すごい」を連発したのは周東だった。自身も4安打5出塁とチームに大きく貢献し、同点のホームを踏んだにもかかわらず、そんなそぶりを見せることなく川瀬を持ち上げたのは、選手会長らしかった。

 リーグ2連覇を狙うチームは、ここまで7勝11敗2分けで単独最下位に沈んでいる。特にホームゲームでは1勝8敗1分けと苦しんでいるからこそ、川瀬の一振りは大きかった。「あれで結局は負けなかったので。負けないことが大事なので」。周東の言葉はチームメートの思いを代弁していた。

 栗原はこの日、2試合連続の3安打を放ち、今季1号ソロもマークした。自身はオープン戦で右脇腹を負傷し、開幕を1軍で迎えることができなかった。自らへの悔しさを募らせる一方で、ユーティリティプレーヤーとして派手な活躍はなくてもチームを支えてきた後輩の姿を絶賛した。

「1打席で結果を出すというのはすごく難しいんですけど。集中力だったり、技術だったりはすごいなと思います。なんかすごくやってくれそうな雰囲気があったので。本当に頼もしいです」

 今後のチームを引っ張っていく2人がそろって称えた川瀬もまた、未来のホークスを背負う存在でもある。柳田悠岐外野手や近藤健介外野手、正木智也外野手ら主力がこぞって離脱するチームにとって、大きな光となっていることは間違いない。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)